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統計から読み解く 訪日香港人のトレンド

「7月の地震の噂」の影響下での消費動向

前号では、京都市が暑さの「40-40」を全国で一番乗り、という記事を紹介した。「猛暑日(35度以上)」と「熱帯夜(夕方から翌朝までの最低気温が25度以上)」の日数をカウントするものである。

この数字、今年は9月15日に「60-60」を記録し、日本史上初となった。昨年も京都市は「50-50」を日本で初めて記録するなど、「京都=暑い」というネガティブなイメージを、データでも裏続ける結果となってしまっている。

本稿を執筆している10月22日現在、京都市の同数字は、「61-68」と、猛暑日はこの1ヶ月で減少したものの、寝苦しい夜は多かった印象である。なお、10月中旬以降、空気が大きく入れ替わり、20度台の気持ちの良い日が続いている。

本号では、「7月の地震の噂」の影響があった、今年4-6月期の香港人の日本国内での消費動向について、昨年同期との比較で見ていきたい。

【2025年9月の訪日者数】

今年9月の訪日香港人数は149,500人と、例の「噂」の影響や香港の景気見通しの不透明感の影響等で、149,500人と、前年同月比12.2%減だった。7月が最も影響が大きく、同36.9%減、翌8月は同8.3%減とマイナス幅が大幅縮小した。底を打ったかと思われたが、9月は2桁減とマイナス幅が拡がった形だ。10月も1割前後のマイナスが見込まれる。

例年9月の香港からの訪日は最も少なくなる月の一つ(もう一つは旧正月が無い月の1月もしくは2月)で、今年の9月も今年の最低となった。また、コロナ禍前19年9月の155,927

人も下回ったことになり、「噂」の影響が残っている事は間違い無いだろう。もう1点、減少要因として、台風16、18号の影響により、香港空港がおよそ合計43時間にわたり発着出来なかったことで、多くの便が欠航した事も挙げられる。

今年1-9月の累計は1,822,600人、前年同期比7.6%減と昨年を割り込む状況にある。

【2025年4-6月期の訪日外国人の消費動向】

観光庁の「インバウンド消費動向調査」を元に、今年4-6月の期間、国、地域別で、日本国内での消費額(1人1泊当たり単価)を算出した(図表1)。

人数ベースでは昨年比でマイナスに入った時期であるが、各国、地域との比較では、1泊1人当りの単価では、香港が引き続きトップの35,500円となった。

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図表1 国地域別1泊当たりの消費単価(20254-6月期) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

次に香港人の消費について、昨年の4-6月期と比較すると(図表2)、1泊当り単価では11.7%マイナスとなっている。インバウンド全体でも消費は減少傾向にあり、全体の前年同期比は10.0%であったことから、香港は全体平均よりも減少率が少し高い結果となっている。

また、費目別に見ていくと、宿泊費と娯楽サービス費(いわゆる「体験」もの)が伸びた一方で、買物代が36.6%減と著しく低下している。「噂」の影響により、「買物」を主目的とした訪日経験や関心の薄いライト層が減少したことが影響したと考えられる。

一方大きく増加した娯楽サービス費の背景は、訪日ヘビーリピーター層や日本への関心の高い層の割合が高まった結果と考えられ、噂の影響も小さく、訪日を避けなかったと考えられるためだ。

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図表2 1泊当たりの消費単価比較(20254-6月期) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

【航空便と平均泊数】

「噂」の影響により、日本への航空券価格が低下したのも記憶に新しいだろう。統計でもその通りの結果となっており、今年4-6月期の香港ー日本間の平均航空券価格は62,180円と、コロナ禍後での最低価格を更新した(観光庁インバウンド消費動向調査)。前年同期比では13.4%減である。

また、平均泊数も6.14泊と減少しており、コロナ禍後最も少なかった昨年10-12月期の6.09泊に近い結果となっている。前年同期比でも7.2%減で、全体として訪日日数が減少していている傾向の中でも、「噂」の影響が少なからずあったと考えられる。

【香港人による買物】

次に、昨年同期比で大きく減少した「買物代」について、香港人による日本国内での買物品目について、購入率と購入者の購入単価について集計を行い、前年同期比を集計した(図表3)。

購入率で大きく増えた品目が無い一方、減少しているのが、「酒類」、「その他食料品、飲料、たばこ」の嗜好品に分類されるもの、「衣類」、「靴、かばん、革製品」のファッション関連の購入率が、4-7%台後半の割合で減少している。

購入単価では、「生鮮農産物」、「本、雑誌、ガイドブック」で単価が向上、「靴、かばん、革製品」、「時計、フィルムカメラ」、「宝石、貴金属」の高単価商品について、それぞれ64.5%減、88.8%減、70.6%減と大きく減少している。

「衣類」も23.9%減と減少しており、靴・かばんと同様に、購入率が高いこれらファッション関連での消費において、購入率も単価も減少したことが、4-6月期の買物代36.6%減につながったと考えられる。

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図表3 香港人の購入品目(20254-6月期)  出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

【香港人による交通機関、娯楽等サービスの利用】

交通機関では、レンタカー利用が前年同期比で1ポイント増の18.5%増と、レンタカーを利用する傾向が継続している。また、これまで多く利用されてきたJRパスについて、23年10月の値上により、利用の減少が続いており、23年4-6月期が11.5%の利用率だったものが、今期は6.0%と、利用が半減した形である。

交通費全体では、前年同期比7.8%減となっており、JRパスやレンタカー、パス以外の鉄道移動の単価が減少したことが影響したと考えられる。

90.7%増と、前年同期で約倍の消費額となった娯楽等サービスについて、購入率で、「舞台、音楽鑑賞」、「美術館、博物館等」が増加している。特に「舞台、音楽鑑賞」は消費単価でも18.3%増の24,436円と好調だ。「推し」のステージやコンサートを目的とした、訪日ヘビーリピーター層が貢献したと考えられる。

一方、コロナ禍後利用が人気だった「テーマパーク」について、利用が減少傾向に有り、コロナ禍後の反動需要が落ち着いた形だ。

購入率で最も大きく伸びたのが「展示会、コンベンション参加費」で、前年同期から5.64ポイントの大幅増となった。香港からの訪日目的で、「商用」なのは全体の1%程度であることから、この「展示会、コンベンション参加費」はほぼ観光客による消費で、「展示会」がメインであったと考えられる。コンサート等も含め、特定のタイミングでしか行われないイベントは、「噂」等のネガティブな情報があっても、訪日につながる大きな動機になることが分かる。

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図表4 香港人の交通、娯楽サービス品目(20254-6月期)  出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

【9、10月の京都市内の様子】

暑さが残った9月、10月上旬は、日中市内を歩く観光客は少なく、アーケードや室内が人気だった。また、少しは暑さが和らぐ夜間に人出が多く見られた。

統計が出ている8月の京都市内の主要ホテルの客室稼働率は76.8%と、前年同月から4.9ポイント増加した。宿泊に占める外国人比率は66.4%と、今年は3月から6か月連続で60%を超える比率となっている。

最後に、京都市と京都市観光協会では交通期間等の混雑緩和のため、手ぶら観光の推進を図っている。その一環として、京都駅到着時のワンストップサービスとして、コインロッカーのリアルタイムの空き状況や手荷物の配送・一時預かりサービス窓口を、市バス乗り場や店舗情報等をオンラインで確認できる「京都駅デジタルマップ~Kyoto Station Smart Navi~(駅スマ)」を、今月から導入した。次回京都にお越しの際には是非ご活用頂きたい。

京都駅デジタルマップ~Kyoto Station Smart Navi~(駅スマ)

https://platinumaps.jp/d/kyoto-station-smart-navi?floor=1F

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図表5 鴨川での夕涼み (202597 筆者撮影)

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図表6 八坂神社 (20251016 筆者撮影)

【筆者紹介】

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清水 泰正(しみず やすまさ)

Japan Tourism Research & Consultancy Limited 代表取締役社長

14年間の日本政府観光局勤務を経て、インバウンド誘客に関する戦略コンサルタントとして独立。シンガポール、香港に計9年間の駐在、現在、京都市観光協会アドバイザー、広島県観光連盟アドバイザー、(社)日本フォトウェディング協会顧問。

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