日本では先の衆院選で大勝した自民党が第2次高市内閣を発足して、「責任ある積極財政」を目指しています。また前政権はアメリカのトランプ米大統領に対して5000億ドル(約75兆円)もの対米投資を約束しています。さらにそのトランプ米大統領は、米議会に対して2027年度の軍事費を1兆5000億ドルに大幅な増額を要求しています。これから莫大な資金が動く訳ですが、これら日米の財政支出は香港や中国にも恩恵があるのでしょうか?(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)
1 日本では自民党が大勝で景気は回復する?
2月8日の衆議院議員総選挙では自民党が大勝しました。高市首相の「責任ある積極財政」に対する期待から翌2月9日の日経平均株価は、6.23%の大幅高となりました。大手金融機関や著名アナリストの予想では為替は1ドル=180円、日経平均株価が6万円から7万円という声が聞こえてきます。外人投資家も日本の政治が安定するとの事で日本株投資に意欲を見せ始めています。
果たしてこのまま日本の株高は続くのでしょうか? 一つ心配なのは、衆議院総選挙で、自民党が勝ち過ぎた点です。自民党の議員の中には高市首相の「積極財政」に賛同できない議員が多く存在します。それら抵抗勢力にあたる議員も多数、当選してしまったのです。反対する議員の考えは財政出動の際の財源、そして仮に財政出動が叶ったとしても、赤字国債の発行を伴う場合は、金利が上昇し(債券価格は下落)、国債の信用が低下する、そして国家財政が破綻すると飛躍した見方をしている議員もいるほどです。
従って、これら高市首相の政策に反対する議員は、恐らく国会に法案が提出される前に、自民党内で潰される事も十分に考えられるのです。野党と闘う前に党内でなし崩し的に「法案」が出てこない事も考えられます。
そう考えますと日経平均株価は年内6万円或いは7万円にはそう簡単には届かないでしょう。株価は景気の先行指標であり、向こう6カ月から1年後の景気を先読みすると言われていますが、これまで期待で上昇していた株価が、もし高市首相の政策が実現しないとなると株価が急落する可能性もあります。高市首相の政策が上手くいけば、中国や香港にも好影響を与えるはずです。しかし党内の財政出動反対派が激しく抵抗した場合は、日本の景気回復は遅れ、中国や香港への好影響ももう少し先の話になるのかもしれません。
2 アメリカとの約束が足かせ
そして何よりも日本の石破前政権はアメリカに5000億ドル(約80兆円)も投資をすると約束しているのですが、それらの投資資金はいったいどこにあるのでしょうか? もしそのようなお金があるのなら、日本国内に投資して頂きたいものです。
トランプ米大統領の「行き当たりばったり政策」の前では、ほとんどの国際企業が長期的なビジネス展望を見通すことが出来ません。そのような国に投資するのは危険極まりありません。
一方でアメリカは、トランプ米大統領が1月7日、2027年度の国防予算は1兆5000億ドルとすべきとの考えを示しました。議会が承認した2026年度の9010億ドルの予算を大幅に上回ることになります。
トランプ大統領は、イラン、グリーンランド、コロンビア、キューバと軍事力を背景に攻撃力をチラつかせながら、各国との交渉を進めています。特にイランとは核開発阻止という大義名分と石油の利権があります。またグリーンランドは対中露の軍事拠点となりますので、まだまだ軍資金が必要になります。
トランプ米大統領にも大儀名分があります。ロシアは武力でウクライナを制圧して、力による現状変更を行おうとしているところです。アメリカやユーロ諸国が提案している停戦に合意しないのであれば、『今度は我々がロシアと同じく武力で他国を制圧してやろう』。つまりアメリカがロシアのお株を奪うことで、ロシアはアメリカに対して一言も文句を言えなくなってしまったのです。
3 米中デ・カップリング
ここ数年、米株式市場はAI関連株、半導体関連株を中心に好調を持続していました。しかしながらAI関連企業によるAIへの設備投資額があまりにも大きい為に、果たして将来的に投資金額に見合う収益を上げることが出来るのだろうか?という疑念が投資家の間に生じています。
最近ではSaaS(必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア)でさえもAIにとって代わられる。つまり現存のソフトウエアがAIにとって代わられ、もうソフトは必要なくなるのではないかと投資家が判断するのも理解出来ます。
AI関連やそれに付随するIT企業の収益性に不透明感が生じている訳ですから、株価の低迷が続く訳ですね。今、アメリカから少しずつ資金が流出しています。
そしてアメリカからの投資資金は香港や中国に流入する可能性が高いと言われています。2025年の米中間の貿易額は、前年比18.7%も減少しています。この数字は対香港の同+18.9%、対ASEAN諸国の同+7.4%、対EU諸国の同+5.4%、対日本の同+4.5%とは対照的で、米中間の減少幅は突出しています。
また中国政府は、これまで外貨準備で保有していた国債を大量に売却しています。中国の米国債保有残高は11月に前月比61億ドル減少し、6826億ドルとなりました。ピークからは30%程度、減少しています。中国によるドル離れです。
このように米中間の「経済デ・カップリング」が進行している訳ですから、アメリカと中国の株式市場における相関性が薄れてきているのです。つまりアメリカ株が急落したからと言って、中国株(香港株も)も連鎖して必ずしも連れ安するとは限りません。むしろアメリカからの逃避資金の受け皿となる可能性が高いのです。
今年の金融市場からは目が離せません。歴史的な分岐点になるのかもしれませんね。
(資料)国別の米国債保有割合のグラフ(2025年)
https://sheet.zoho.com/sheet/publiccharts/bc6336c7e55a4e758b089982ade8b4da1745817998175919 出所:米財務省公表次第
「ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー」
ジュエリー:日本では衆議院議員総選挙、自民党の圧勝だったね。一方で予想できたとは言え、中道は悲惨な結末だったね。
アトム: それよりも自民党は「政治とカネ」の問題が解決してへんで。日本国民はホンマにそれでええんかあ? 圧勝したことで、「政治とカネ」の問題がうやむやにされてしまうんとちゃうの?
ジュエリー:そうよね。この圧勝で、しばらく自民党の「暴走状態」になるかもね。
アトム: どうでもええけど、自民党は単なる「選挙互助政党」やからな。志の低い多くの男性議員、選挙に当選することしか頭にないみたいやけど、ホンマにええ加減に仕事せえよ。いっぺん、閣僚全員、女性議員にしてみたらどうなんや?
ジュエリー:うん、いいアイデアね。確かに仕事しているのは高市さん、片山さん、小野田紀美さんだけだものね。男性政治家のこの体たらくが、「日本の失われた30年」だったってことね?
アトム: ホンマ男性議員は情けない。カネや女性絡みに弱い。
ジュエリー:まあ女性でも某市の市長みたいにラブホ・ミーティングしていた女性市長も
いるけどね・・・。
アトム: そういう意味でも日本は、家庭に入ってしまっている女性のフレキシブルな雇用創出が重要。またニートが70万人も居る訳やから、これらの労働力をフル活用すれば数百万人の眠れる雇用が掘り起こせるわけや。
ジュエリー:つまり移民を入れる前に、出来ることがあるって事よね?
アトム: よう分かっているやん。まあ政治家はまず日本の為の政治してくれよ。
ジュエリー:素晴らしいご意見! あなたもどこかの閣僚みたいに「覚醒」した?
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
香港在住。
1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。
ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。
香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。
香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。
ドラゴンゲート株式会社の海外特別顧問、投資兼財務戦略アドバイザー。
著書多数。
https://www.icg-overseas.com/blog
日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから。





