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令和 政経ミステリーゾーン

デフレ経済とインフレ経済

若い香港市民は出来るだけ香港内では消費は控えて、週末になるとお隣の深圳や珠海、広州市でファッショナブルな洋服を購入したり、デザインのよい靴を購入したり、美味しい中華料理を食しています。これら若者の間で「北上消費」が定番となってきた背景には、物価が安いだけでなく、サービスの向上が挙げられています。(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)

北上消費でデフレ圧力

香港特区政府の統計によりますと2024年通年の小売業総売上高は前年比7.3%減の3768億香港ドルとなった模様です。減少した売上高の内訳を見てみますと、自動車・同部品が前年比17.2%減、中医薬が同14.8%減、宝飾品・高級時計・贈答品が同14.5%減、デパート商品が同13.9%減となっています。耐久消費財や高額商品の売れ行きが更に鈍化しています。

原因は中国本土からの訪問者が消費を抑制しているということもありますが、同時に香港市民が域内でこれらの品目の購入を控え、深圳や珠海で調達していることにも起因しています。もちろんこれまでもネットショッピングの淘宝網(Taobao)を利用して備品・商品を購入している人は多かったものの、コロナ明け後は自分の目で見て確かめて、高額製品や商品を購入する香港市民が増加しているのではないかと思います。

そして北上消費のついでに、グルメやマッサージ、エステといったサービスを堪能する市民が増加傾向にある為に、香港内での消費が盛り上がらないのでしょう。

さもなければ、ドル高(=香港ドル高)を背景に日本や韓国、タイやベトナムで「北上消費」を楽しむ香港からの旅行者も香港域外での消費に『貢献』しています。香港域内では物価が下落するデフレ圧力が掛かってきています。香港のインフレ率は2024年12月まで+1.4%まで低下してきており、トレーディング・エコノミクスのグローバル・マクロ・モデルとアナリストの予想によりますと、香港のインフレ率は2025年第四半期末まで1.80%に低迷すると予想されています。

日本人は「デフレ脳」からの脱却

一方の日本ですがデフレ脱却はもとより、インフレ経済への移行が進展しています。2024年12月時点でのインフレ率は前年同期比+3.6%に上昇しました。2024年通年でも前年比+2.5%となっており、特に日本人の主食であるお米の価格は、28.8%も上昇しました。

日本銀行は今後もインフレ傾向が続くと警戒し、1月には政策金利を0.25%引き上げて、年率0.5%としました。今後もさらなる利上げが行われると市場関係者は見ています。

そして2月7日の日米首脳会談では、石破首相が対米投資を現在の8000億米ドルから1兆ドルに引き上げると約束し、日本は5年連続対米投資額で世界首位であることも強調しました。またいすゞ自動車による米工場建設の発表も同時に行いました。これだけの投資額を対米向けに行いますと円安、そして金利の上昇に拍車を掛けることにも成り兼ねません。

日本には依然としてインフレを警戒する必要があるように感じます。

また首脳会談の中では、米アラスカ州から液化天然ガス(LNG)を購入するという話も出ています。コスト面から見てパイプラインの施設や保険、またそれに付随するセキュリティの構築に莫大な費用が掛かります。もちろん輸送費や通関料も考慮しますとエネルギー価格の上昇は確実で日本経済にとってインフレの一因になることは間違いありません。

当面、日本経済がインフレに戻ることはないのですから、日本人がインフレマインドに移行する必要があります。

ドナルド・トランプ大統領という「黒船」が日本人に突き付けた「思いやり投資」は日本経済のインフレをサポートする要因になります。第35代米大統領のJFケネディは、「我が同胞アメリカ国民よ、が諸君のために何が出来るかを問うのではなく、諸君がのために何が出来るかを問うてほしい。」という就任演説時に米国民に語り掛けた一文を思い出しました。

と同時に上記の演説文を「アメリカ国民」を「日本国民」に、「国」を「日本」に置き換

えることが出来ます。トランプ大統領との首脳会談はまさに「我が同胞日本国民よ、米国

が諸君のために何が出来るのかを問うのではなく、諸君が米国のために何が出来るかを

問うてほしい。」ということになります。トランプ大統と石破首相の首脳会談からは、

このような文言を読み取ることが出来ると思います。

それはさておきまして、日本経済は完全にインフレに移行しました。日本人はインフレ脳

に転換する必要があります。

『億万長者』という言葉は既に死語

2024年の東京都23区内での1戸あたりの新築マンションの平均価格は1億1181万円となりました。昔から日本には「億万長者」という言葉がありましたが、今は昔・・・。

富裕層のみを顧客とするスイスや香港のプライベートバンクも最低預金額が、300万米ドル(4億5000万円)以上が口座開設の最低ラインということですから、「億万長者」という言葉は既に死語です。しかも前述のように今後はインフレが更に進行していく材料には事欠きませんので、我々日本人もその対策を早急に立てていく必要があります。

そしてインフレの行き着く先は、最終的にはアメリカのような『貧富の格差がさらに拡大する社会』になります。インフレは平等にみなさんの生活に降りかかってきますが、必ずしも平等に資産を守ってくれる訳ではありません。そしてもしかしたらトランプ大統領のような、破天荒な首相が近未来に日本にも誕生しているのかもしれません。今、日本で起こっているインフレは、本格的なインフレ経済への序章に過ぎません。日本政府は予定調和のように国民には何もしてくれません。自分の身は自分で守り、自分の財産は自分で殖やしていく時代が来たのです。今後は、株式や不動産、ゴールドやビットコイン、外貨建て預金も含めて資産増を積極的に推し進めていく時代に変わりました。トランプ大統領と石破首相の会談ではトランプ大統領の日本重要視を垣間見ることが出来ましたが、日本人個人に対する配慮ではないことを私達は肝に銘じておく必要があります。

 

(資料)日本のインフレ率(過去1年)

https://tradingeconomics.com/japan/inflation-cpi

 

ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー

ジュエリー: 最近の世の中は物騒になってきたわよね。

アトム:   ホンマ、ここ数年、奇妙な事件が多くなってきたよなあ。

ジュエリー: 紀州のドンファン事件、新橋のガールズバー殺人、長野のアンソンフェルフィ絡みの窃盗・強盗事件。海外からも狙われるってね。

アトム:   移民・難民問題もめちゃくちゃやわ。川口市の市民がかわいそうなクルド問題。みんながみんなじゃないやろけど。悪いヤツは、はよ~、追い出す事

でけへんのかなあ?

ジュエリー: それは人権問題が関わってくるし、一筋縄ではいかないのよ。

アトム:   台東区や新宿区のベトナム人。それから名古屋のフィリピン人とかやな。

ジュエリー: まあ悪い人達ばかりではないよね。移民・難民の人たちも一生懸命に日本文化やしきたりに馴染もうとしている外国人も多いのよね。

アトム:   まあ人口の何%を超えないとか、市の人口の何%を超えないとか、早めに法律面を整備しといた方がええな。

ジュエリー: そうねえ。いい人と言えば、先日、私の留守宅に見知らぬ男の人が勝手に入って居たのよ。

アトム:   何や、それ? 泥棒か?

ジュエリー: いいえ、その男の人は何も取らなかったし、私に危害も加えなかったの。

アトム:   何も取られへんかったって、よ~しらべたんか?

ジュエリー: だから「何の被害もなく、お帰りいただいた。」んです。

アトム:   アンタ、アホちゃうか?

 

筆者紹介

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沢井智裕(さわい・ちひろ)

香港在住。
1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。
ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。
香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。
香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。
著書多数。

 

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