香港政府の2025年度予算は670億香港ドルの財政赤字になる見通しで、4年連続の財政赤字となるようです。歳入の柱だった土地売却収入が激減しており、2024年度に前年度比30%減の135億香港ドルになる見込みとなりました。しかしながら香港の財政赤字はまだかわいいもので、世界の国々も財政赤字や債務残高増に悩まされています。そんな中、最も債務残高の規模の大きいアメリカは規格外です。(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)
19世紀に戻るアメリカ
アメリカ政府は債務残高上限額(31兆4000億ドル)をキープするのにアップアップして
いる状況です。2024年度(23年10月‐24年9月)の米財政赤字は1兆8330億ドルに拡大し、コロナの時期を除いて最大となりました。債務の利払いだけで初めて1兆ドルを超え、
社会保障、医療、軍への支出も膨らんでいます。
米トランプ大統領は、この大きな財政赤字と米債務残高の縮小という目標を達成する為に大改革に挑んでいます。「アメリカファースト」を旗印にして、自らを「Tarrif Man(関税男)」と称しています。「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大な国家に)にトランプ支持者は熱狂しています。
簡単に言いますと、トランプ氏は19世紀の西部開拓者時代を想起しているのでしょう。つまりグローバリゼーションを放棄し世界からアメリカの資金を引き上げるのです。1980年
代から2000年代に掛けて、アメリカはグローバリズムを標榜し、コカ・コーラ、マクドナルド、スターバックスなどを世界に送り出してきました。そして2000年代から2020年代にはマグニフィセントセブン(アマゾン、マイクロソフト、グーグル等)を世界に輩出し、ビジネスの覇権を確立してきました。そして政治大国&経済大国の地位を築いてきましたが、現在、トランプ大統領が執っている政策は全てアメリカを弱らせる政策です。
誰も幸福にならないトランプ政策
北米自由貿易協定(NAFTA)など無視する形で、カナダ、メキシコからの輸入品に関税を掛け、同盟国を含む欧州同盟(EU)や日本、韓国に対しても厳しい貿易政策を取っています。これは莫大な貿易赤字の解消を念頭に置いたものですが、関税というものは、モノの値段を引き上げるものですから、アメリカ国内にインフレを輸入しているのと同じ原理になります。コロナ後の高金利政策によってようやくインフレを鎮静化させることが出来たにも関わらず、今度はトランプ氏が自らインフレを助長するような政策を行っているのです。
バイデン前大統領のインフレ対策の失敗で、ハリス前副大統領が2024年の大統領選挙で、その責任の一旦を負わされて敗退に追い込まれたことを、トランプ大統領が知らない訳はありません。トランプ大統領の支持者や同じ共和党の仲間からも辛らつな声が発せられています。もちろんトランプ大統領の「本丸」は中国ですので、他国間の戦闘や支援に費やす「戦費」を回収し、それらの資金は財政赤字の削減や債務残高の返済に充当したいのです。
株価急落にビビったトランプ氏
これまでアメリカは終始一貫して「力による現状変更は許さない」とロシアや中国に対して、警鐘を鳴らしてきました。しかしトランプ大統領は、自らはパナマ運河を香港の一
企業のハチソンハウスから買収し、そして北欧デンマーク領のグリーンランドをカネと圧力で奪おうとしています。このような行為は「力(カネと脅し)による現状変更」以外の何物でもありません。そしてトランプ氏は、かつて金融街のウォール街に対しても、「高額報酬に対する課税を強化する」と明言していた時期がありました。現時点では、その話は立ち消えになっていますが、もちろんウォール街の人たちはトランプ氏の言動を信用していません。
それが証拠に2025年初からアメリカの株式市場は低迷が続いています。代表的な株価指数であるS&P500種は、3月21日の時点で-3.64%に対して、香港ハンセン指数は、+18.09%、ドイツ株のDAX指数は+14.98%、フランス株のCAC40指数も+8.97%と割安感のある香港や欧州諸国にウォール街の資金が逃避されるという屈辱を味わっています。
特にマグニフィセントセブンは、同時期にメタの+1.83%以外は、アップルが-12.84%、NVIDIA-12.35%、グーグル-13.37%、アマゾン‐10.57%、マイクロソフト‐7.17%、と壊滅状態で、テスラに至っては、-38.41%とトランプ大統領就任前のゲインを吐き出してしまいました。それはそうでしょう。USスチールを日本製鉄が救済買収しようとしているのに、その好意を無にしてUSスチールを「ゾンビ企業化」しようとしている訳ですから、やることなすこと全部、経済にとっては劇薬となっています。
年初、米国債市場では今年は1度の利下げを織り込んでいましたが、今は3度の利下げをマーケットは予測しています。つまり世界のお金は、株式市場(リスク資産)から債券市場(確定利回り商品)に逃避している訳です。アメリカ景気の後退が近づいていると予想し始めているのです。(=世界景気の後退)
日本政治のお株を奪う
「今だけ、カネだけ、自分だけ」。この「3だけ主義」はこれまで日本の政治家を的確に
表現していると感心していましたが、一人でそれを成し遂げているのがトランプ大統領です。ウクライナでは、ロシアとの停戦を前提に、ウクライナの鉱物資源を奪い、ウクライナには安全保障の担保なし。
ウクライナは1991年のソビエト連邦崩壊後、独立を果たしましたが、その際にソ連時代に保有していた核兵器を放棄することを決定しました。1994年にはウクライナ、ロシア、アメリカ、イギリスの間で結ばれた「ブダペスト覚書」に基づき、ウクライナは核兵器を完全に放棄しました。それを反故にしているのがロシアとアメリカです。世界の国々にはウクライナの安全を守る義務があるのですが、また世界には約束を守れない信用出来ない国々もたくさんあることを、私達も覚えておく必要がありそうですね。
(資料)「米財政赤字推移」米財務省より

ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー
アトム: 「維新」はホンマ、何やってくれてんねん?
高校授業料無償化? なんで維新が国政に参加してんねん?
アンタらは、大阪の事だけやってくれたらええねん。
大阪の労働者の平均年収をはよ1000万円まで引き上げてくれ。
ジュエリー: でもこれって石破さんの思う壺でしょ? 或いは財務省?
アトム: 両方やろ。国民民主が言うてる178万円でええねん。減税効果、大きいやろ?
維新は結局、国民の事やなく、党利しか考えてないっちゅうこっちゃ。
ジュエリー:確かに非課税枠を178万円まで引き上げれば、パートやアルバイトの人達も
労働時間を延長できるし、マクロ経済効果も大きいしね。
外国人の労働者の受け入れ数も削減出来るかもしれないしね。
アトム: そやった!それや。なんでインド人学生に300万円も払うねん。日本に来る
インド人なんか超富裕層の子息しかおれへんやろ。下手したら数百億の富豪の子息やで。オレも仲間たちと財務省前に行って来ようかな。へへへ。
ジュエリー:そう言っておきながらミャンマーに連れていかれないでね。
でも財務省も方々も一生懸命、お仕事をされているのよ。増税ならば出世
出来るし、減税なら左遷されるのだから、必死よね。
アトム: 財務省前いうたら、裏金問題はどうなったん?
ジュエリー:何も解決していないわよ。
アトム: しゃあないなあ、玉木さんに女性との付き合い方でも教えてもらうわ。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)

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