香港と中国本土の政治・経済・社会ニュースを日本語で速報します
中国―経済

中国の電気自動車乗り比べ ⑤タクシー編

タクシー編 (日産:リーフ、上海汽車:享道)

このたび、中国国内の自動車事情について知るため、自動車メーカー各社および開発区域に出向いて試乗体験をし、それぞれの自動車の乗り心地を比較するという試みをしてみました。各社の自動車乗り比べを通し感じたこと、および中国国内の現状をご報告させていただきます。

当レポートは、セダン編・SUV編・ミニバン編・コンパクトカー編・タクシー編・まとめ編に分けており、今回は5回目、タクシー編をお届けします。

蘇州には、三カ所の自動運転車の実験区域があります。そのうちの一つ、高鉄新城エリアで『自動運転のタクシー』に乗れるとのことで、実際に行ってみました。

中国では、自動運転の開発を進めるため国が実験区を設け、許可された区域内で実験をすることができます。ここでも、道路上には屋根に大きなカメラを付けた車が何台も走っている光景を見ることができました。まさに、「実験中」という感じです!しかし、区域内で許可されているとは言っても、何でもかんでも自由に好き勝手できるというわけではありません。

国家が設けている自動運転開発区域においては、決められた条件のもとで無人運転や自動走行等が可能であり、この区域内で開発や実験がされています。現在、中国各地に指定開発区域が設けられており、様々な企業が実用化に向け参入している状況です。〇〇試験区では乗用車の研究、△△試験区では無人走行の研究…、□□試験区では運転席に必ずドライバーが乗っていないといけない…等、その区域ごとに条件が決められています。

蘇州の高鉄新城試験区においては、タクシー・バスの実験のみ、かつ運転席には必ず人が乗っている状態でないといけないそうです。また、この区域では決まった時間に決まったルートを巡回するバス、無人デリバリー車も走行しています。現在、中国の中でも最も開発が進んでいる地域は深圳・広州・上海・北京で、これらの地域では、完全に無人のタクシーが走行している等、許可されているレベルも高いそうです。

訪問時時点で、蘇州で体験できる自動運転は日産「リーフ」及び上海汽車「享道」のロボタクシーのみでしたので、この2台に乗ってみました。誰でも無料で利用することができ、滴摘のようにアプリ内でタクシーを呼べば乗ることができます。ただし、正確な位置を把握することはできず、試験区にあるタクシー乗り場を乗車場所・降車場所にするようなシステムでした。

pastedGraphic.png  ←タクシー乗り場。ここで乗り降り可能。

この区域内では、日産の無人タクシーは2台、上海汽車のタクシーは5‐20台ほどしか運行しておらず、なかなかつかまりません…。しばらく待っていると、上海汽車の享道を捕まえることができました!

pastedGraphic_1.pngpastedGraphic_2.png

車体には「Level4」の文字が!ついに運転主体が車である自動運転を体験することができました。運転席にドライバーはいるものの、完全に手を離して動いています。乗車時間が非常に短かったため、性能の評価ができませんが、基本的にはハンドル操作には問題ありませんでした。車線にはみ出して駐車された車の隣を走行する状況があり、その際には速度を落とし、停まっている車にぶつからないようにゆっくりと前に進んでいました。また、パネルに周囲の車・人の状況が映し出されており、車が何を基準に判断し走行しているかが目に見えて分かるようになっています。

pastedGraphic_3.png ←上海汽車のタクシーの内装

上海汽車のタクシーから降り、続いて日産リーフのタクシーに乗車しました。

pastedGraphic_4.pngpastedGraphic_5.png

内装ですが、後部座席にも2つのパネルがあります。タッチ操作も声の認識も可能でした。声を認識するのに少し時間がかかっていましたが、大部分の操作を音声認識により行うことができます。さらに、後部座席に2つのパネルがあります。これまでは、車の運転主体は人であり、ドライバーの運転しやすさ・安全に焦点が当てられていましたが、自動車が主体になるということは、後部座席に座っている人も含めた乗客全員それぞれが、車での過ごし方を自由に決められる状態にしたいという思いから、パネルが2つあるそうです。

自動運転の性能についてですが、「すごい!!」の一言でした。運転手がハンドルから手を離している、という感覚は全くなく、まさに普通の安全運転であるようです。右折時には少し速度を落とし、歩行者がいないこと・危険がないことを確認して進みます。反対に、歩行者を認識したときには自動で速度が落ちます。車道に飛び出して停車している車があった状況では、すぐにその車を避けることができ、交差点に入った際にも問題なく発進しました。車線変更もゆるやかです。歩行者が突然現れた際には、スピードは落ちましたが、運転席の人がハンドルを握らなくてはならなくなりました。(動画2‘58)このような危険があるときには人の手による操作が必要です。

感動している間に、目的地のスポットにあっという間に到着してしまいました。はやい…。

3分半ほどの間しか乗ることができませんでしたが、試験区ならではの体験ができました!

課題とされていた信号認識に関しては、前の車に追従走行する機能に加えて、この地域を走行する車には信号の色も認識する機能があります。また、車から信号機を認識するだけではなく、信号機から車にも情報を発信する仕組み(VtoI)も研究されているようで、双方向からのやり取りができれば、より正確な運転ができるようになるとのことでした。国家としても、どのように信号機から信号を送ればスムーズな交通に繋がるのか等も同時に研究を進めているようです。

車両の性能とテクノロジーについては、繁華街でも安全に走れるレベルに到達しているそう。ただし、法律とコストの関係から実用化には時間がかかっている状態です。法律の問題と聞くと、事故が起こった際の責任所在等を真っ先に思いついたのですが、それ以外にも、法律を開放した際の既存タクシードライバーの保護等や収益手段としての在り方等も問題として挙がってくる可能性があります。車体がいくら安全であり、交通事故が起こらなかったとしても、自動運転普及に伴い付随する問題が新たに出てくる可能性が大いに考えられるとのことでした。しかし、本格的な実用化は2025年を目標に着実に進められており、ナビ開発の企業・タクシー業界・部品製造のメーカー等、業種や分野問わず様々な企業が自動運転車の実用化に向けて準備を進めています。ここで、日系企業の関わり方についてですが、残念ながら技術の分野では後れを取っているとのこと。(中国・米国が世界でトップ。)中国では日産がアプリ・システムの分野から参入、トヨタは車体の提供をしている等、部分的な進出はあるものの、対等に競争できているかどうかは不安なところがあるというのが現状のようです。

自動車業界に詳しい知人と話していた際に、既に中国・米国では技術が相当進んでいるので、日本企業はこれから参入するよりも、例えば「自動運転車内での快適な過ごし方」「自動運転車と旅行を結び付ける」「自動運転車内でカラオケができる」のようなサービス分野に特化したところで日本らしさを生かし、エンタメ分野で活躍できるかもしれないと話していました。確かに、移動手段としての自動運転車としてではなく、サービス提供の場として利用できるとビジネスの幅ももっと広がり、日本が得意とするサービス精神も発揮できるかもしれませんね。

しかし、中国やアメリカに自動車分野で後れをとっている現状は悔しい限りです…。

そして、何の気なしに区域内を歩いていると、こんな看板があり…。

pastedGraphic_6.png

自動運転関係の施設っぽいな、と思い、行ってみました。地下を覗いてみると、カメラを搭載した車がたくさん置いてあります。気になったので、地下に降りてみました。

pastedGraphic_7.png

建物の中は、駐車場のような場所になっており、実験に使われるのであろう車がたくさんありました!どの車にも車体上部に大きなカメラが付いています。

pastedGraphic_8.pngpastedGraphic_9.png

どうやらここは、このエリアの実験車の待機場所・実験場所であるようで、駐車場内にA区、B区、C区、、、と分かれており、

pastedGraphic_10.pngpastedGraphic_11.png

充電エリア、展示エリア、駐車実験エリア、自動車改装エリアなどの分類がされていました(写真左)。そして、街中を走っている自動車は、ここを発着点としているようでした。

案内板(写真右)からも乗用車・タクシー・商用車・小型運輸車などの開発のために、自動車メーカーだけではなく、IT企業やタクシー会社、物流会社が実験をしている様子が分かります。

高速鉄道の駅のすぐ近くの地下パーキングのようなところで、薄暗くひっそりとしており、人もまばらな不気味な空間でしたが、こんな場所があるとは想像していなかったので、なかなか興味深かったです。

その他、この区域で見つけた自動デリバリー車、自動バスです。

pastedGraphic_12.pngpastedGraphic_13.png

以上、タクシー編でした。

次回は、最終回のまとめ編です。

今なら無料 日刊香港ポストの購読はこちらから
香港メールニュースのご登録

日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから