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中国人事関連制度アップデート

中国は2024年において定年制度や社会保険で制度変更があり、会社の就業規則等を見直す企業も増えています。主な内容を紹介します。(NAC名南コンサルティング・浜田かおり)

2.社会保険関連規定

2.1 柔軟な退職制度実施弁法

定年延長制度実施に伴い、人力資源社会保障部より2025年1月1日施行で企業の社会保険納付義務期間等について明記されています。

・従業員が基本養老保険受領の最低納付年限に達して前倒し定年退職する場合(条件は前述1.2の通り)、本人の選択する退職時間の3カ月前までに書面で企業に通知すること。

・従業員が法定退職年齢に達し企業と従業員間で協議一致して退職延長する場合(条件は前述1.2の通り)、企業は1ヶ月前までに書面で退職時間を明記し、一度確定したら再度延期しない。退職延期の期間中、企業と従業員は不足無く社会保険費を納付する。

・企業は従業員が選択した退職当月までに、社会保険取扱機構に基本養老年金受取の申請を提出し、社会保険機構は適時に審査を行い、審査通過の翌月より養老年金の受取を開始する。

・企業は従業員の意向を尊重しなければならず、強制させてはならない。

2.2 外国人工作許可証と社会保障カードの融合

「人力社会保障部による外国人工作許可証と社会保障カードの統合作業の通知」(人社部[2024]75号に

よると、2024年12月1日より、外国人の就労許可に対し発行されていた工作許可証カードを発行せ

ず、社会保障カードに統合するとのことです。今後、工作許可証の申請、延期、変更時に社会保障カー

ドが発行されることになります。

・外国人は入国後、携帯で“電子社保卡”アプリをダウンロードし、工作許可登録画面に入った後、姓

名、工作許可番号、パスワード設定等を入力後、実名認証と本人検査照合後に、工作許可情報が含ま

れる電子社保カードを受領でき、更に実体カードを申請取得する。

・外国人を雇用する企業或いは外国人本人は《工作許可通知》或いは電子社保カードにより、オンラ

イン或いは社会保険機構窓口にて社保加入登録手続きが可能。

・各地の人力資源社会保障局はカードの融合について技術的な準備を行い、規範文書の発布を待って

情報システムと設備改造を行うこととなる。

工作許可証と社会保障カードの統合についての発布と同時に、外国人の社会保険加入についても元の

2011年10月15日施行文書が2024年12月23日より修正発布されています。修正内容に外国人の社

会保険加入を強化する意図は見受けられませんが、上記の2つのカード統合により外国人の社会保険

加入が促進される可能性もあるため注意が必要です。

なお日本と中国の間には日中社会保障協定が2019年より施行されており、中国の養老年金加入免除の

適用証明書を日本年金機構で申請取得し、中国の社会保険加入時に提出して養老年金のみ加入免除す

ることができます。養老年金以外の、医療、失業、労災、生育保険には加入することになります。

2.3  深セン市社会保険費用申告方法の変更(2024年7月)

深圳市における企業従業員の社会保険費用納付はこれまで社会保険局の画面から企業情報でログインし、加入退出や基数変更を行い、企業の銀行口座より毎月20日~25日頃に自動引き落としされていました。2020年11月以降税務局による代理徴収に移管後も、引き続き社保局画面での調整と自動引き落としが有効でしたが、2024年5月、6月の試行期間を経て7月より正式に、他の税種と同じように申告と納付の2段階のプロセスを経て納付が実施されることになり、自動引き落とし機能が無くなりました。企業の深圳電子税務局或いは社会保険局の納付申告アプリ等で納付申告が可能となっています。広州市や東莞市等は以前よりこの申告納付方式が採られており、深圳市はコロナ前の2018-2019年頃以降、税務局代理徴収への変更等を経て、今年より実施となっています。

操作上の留意点は次の通りです。

・社会保険費用の税務局による代理徴収により、税務局システムは、企業による個人所得税源泉徴収申告時に申告される給与額と、社会保険費用申告時の基数とを比較することができ、申告総額だけではなく個人レベルで比較可能となっている。

・深圳市は、社会保険基数の変更が規定上前月度給与総額となっているため、他の多数の地域が年1回基数変更している一方、毎月基数変更が可能。

・会計(或いは出納)担当者は通常、電子税務局の税申告手続き権限者ログインが可能であり、同権限者はデフォルトで社会保険申告納付手続きも可能。社会保険情報は納付基数、つまり給与情報を含んでおり、企業内部では、給与明細を取り扱う人事担当と、給与・税・社会保険費用の各総額のみを把握する会計担当の権限を分けていることも多いかと思われ、申告手続き権限者に、社会保険申告納付権限も与えるかどうかについて、管理者による確認が必要となる。

3.法定祝日の増加に伴う平均勤務日数変更

《国務院〈全国年度祝日及び記念日休暇弁法〉の決定(国務院令第795号)にて、2025年から法定祝日が11日から2日増え、13日となることになりました。このため、通年の月平均勤務時間と給与換算額の計算についてあらためて通知(人社部発[2025]2号)が発布されました。

・平均勤務時間の計算

年間勤務日数:365日-104日(週末休息日)-13日(法定祝日)= 248日

四半期勤務日数:248日÷4四半期= 62日/四半期

月間勤務日数:248日÷12か月 = 20.67 日/月

2024年まで月間勤務日数は20.83日(労社部発[2008]3号)でした。

この数値は標準勤務時間として、病気休暇の累計日数等の計算に用いられることがあります。

・一日/1時間当たり給与換算

労働法第五十一条の規定に基づき、法定祝日には雇用者は給与を支払うものとされ、給与の一日/1時間換算額の計算時、13日の法定祝日を差し引いてはならない。

一日当たり給与:月額給与÷月額換算日数

一時間当たり給与:月額給与 ÷ (月額換算日数×8時間)

月額換算日数: (365-104)÷12か月=21.75日

この数値は残業代計算に用いるほか、勤務日数按分で支払われる場合に用いられます。

 

(NAC国際会計グループ)
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