香港と中国本土の政治・経済・社会ニュースを日本語で速報します
総経理のためのビジネス支援室

中国企業の対外進出関連税務について(2.国外投資手続き)

中国企業による海外進出において、国外投資の行政手続きと外貨管理局への手続きが必要となります。関連の規定について紹介します。(NAC名南コンサルティング・浜田かおり)

1.国外投資に関わる手続き

1-1. 国外投資に関わる手続き手順

中国に登記された企業の国外投資(Overseas Direct Investment, ODI)に関わる手続きには、次が含まれます。

(1) 商務部門に対する国外投資備案/許可申請により、《企業国外投資証書》の取得

(2) 発展改革委員会に対する国外投資備案/許可申請により、《国外投資プロジェクト備案通知書》の取得

 (3) 銀行を通じ外貨管理局へ《国外直接投資外貨登記証》の申請取得

    これらの手続きを経ずには資本項目としての対外送金は認められません。また、中国企業がODI手続きを経て設立した海外企業が、例えば再度中国へ再投資するか、若しくは別の中国企業の持分を譲り受けたりする場合に、元の国外投資時のODI備案資料が必要となりますので、注意が必要です。

「国外投資」には、香港、マカオ、台湾への投資も含まれます。

1-2. 商務部門

 (1) 備案と許可の区別

 商務部門(或いは省レベル商務部門)にて申請する国外投資については、許可制と備案(届出)制に分かれており、国外投資がセンシティブ投資先国家或いは地域に関わるか、センシティブな投資領域に関わる場合、許可制とし、それ以外は備案制となっています。センシティブ投資先とは、国交のない国若しくは国連制裁地域、とされており、センシティブ投資領域は武器装備製造修理、クロスボーダー水資源開発利用、新聞メディア領域のほか、制限される業種として以下が挙げられています。

不動産、ホテル、映画産業、娯楽業、スポーツクラブ、実態の投資プロジェクトの無い投資ファンドやプラットフォーム

 (2) 備案手続き時の提出資料、手続き手順と所用日数

  

広東省政務サービスのHPによると、国外投資備案の申請時、投資額1億米ドル以下は市の商務部門、1億米ドル以上は市の商務部門の初期審査を経て省の商務部門にて審査するとされており(この他国有企業等は直接省の商務部門が審査)、提出の必要な資料は以下の通りとされています。

①国外機構備案表

②国外機構設立についての企業による決議文書

③営業許可証

④国外機構設立の真実性に関する承諾書

企業は商務部門のシステムにて①の備案表を記入しダウンロードし他の資料と合わせて商務部門窓口にて提出します。

同HPの記載では公約の手続き日数は2日、法定所用日数は3日とされていますが、実際には受理件数の多少によりまた追加資料等もある場合、2週間~1ヶ月程度かかる想定も必要なようです。

2社以上の中国企業により共同で国外投資を行う場合、出資の多い企業が代表してその他企業の同意により備案提出を行います。

《企業国外投資証書》取得後、記載内容に変更がある場合、元の商務部門にて変更手続きが必要です。また《証書》発行より2年以内に実際に国外投資を実行しない場合、証書は自動的に失効するとされています。

投資した国外企業が、国外で再投資を行う場合、国外の法的手続き終了後に、商務部門への報告が必要とされており、システムにて《国外企業再投資報告表》を記入し、ダウンロードして押印署名後商務部門に提出することとされています。

1-3. 発展改革委員会

(1) 投資活動の範囲

 発展改革委員会の《企業国外投資管理弁法》によると、企業による国外投資活動とは、中国国内の企業(投資主体)により直接或いはその支配する国外企業を通じて資産・権益への投資或いは融資・担保等の提供を以て国外所有権、支配権、経営管理権その他の関連権益を取得する投資活動を指すとし、以下の活動を含むがこれに限らないとしています。

(1) 国外の土地所有権、使用権等の権益を取得する

(2)国外の自然資源調査、開発特許権等の権益を取得する

  (3) 国外のインフラ所有権、経営管理権等の権益を取得する

  (4) 国外企業或いは資産の所有権、経営管理権等の権益を取得する

(5) 国外固定資産の新規建設或いは改築

  (6) 国外企業の新規設立或いは既存国外企業の増資

  (7) 国外投資ファンドの新設或いは出資

(8) 協議、信託等による国外企業或いは資産の支配

(2) 申請手続き

 許可制と備案制があり、センシティブ地域・業種に対し許可制とされているほか、中央企業(国有管理金融企業と国務院等直接管理の機構)及び中国企業の投資額3億米ドル以上のプロジェクトは国家発展改革委員会への申請、地方企業且つ3億米ドル以下は省レベル発展改革委員会への申請とされています。

申請はオンラインと窓口申請となっており、プロジェクト申請には以下の報告が必要とされており、深セン市発展改革委員会のシステム申請指南による各申請資料についての説明と合わせ、以下のような要求があります。

なお所要日数は、発展改革委員会の《企業国外投資管理弁法》には受理から5日以内に不足資料の通知、7日以内に書面審査結果の通知等が記載されていますが、各地の実際情況に基づき、実際には更に所要日数がかかることが予想されます。

①投資主体情況

・複数投資者の場合、出資額の多い順に各投資主体の情報を提出する。

・投資主体の営業許可証の記載通りに、設立日や経営範囲等の各種記載事項を記入する。

・直近2年の信用情況欄について、投資主体の支配株主を最終実際支配者まで記入する。

・総資産、純資産、主要業務収入、純利益等の欄は、最新の監査済み財務諸表に基づいて記入する。

②プロジェクト名称、投資目的地、内容と規模、中国側投資額等

・新規建設プロジェクトの場合、設立地、建設内容、規模、工事技術方案、工事期間、主要製品規模と目標市場等。

・新設企業の場合、企業名称、登録地、登録資本、法定代表者、企業類型、経営範囲等の基本情況。

・プロジェクト買収の場合、企業名称、登録地、登録資本、法定代表者等の買収対象基本情報のほか、主要資産分布(業種領域と所在地)、生産経営情況、財務情況、上場及び最新株価情報(ある場合)、製品、技術、品質と市場シェア情報。資産買収の場合、基本情報に加え資産の評価額等を含む。また買収案(買収対象、買収価格:評価額算定方法の説明を含む、取引方式、買収対象の買収前後における最終支配者まで遡る資本構成図等)

・プロジェクト総投資額及び中国企業投資額とその用途説明、その他企業出資情況。中国側投資総額には、投資主体が直接或いはその支配する国外企業を通じてプロジェクトに投入する貨幣、証券、実物、技術、知的所有権、株式持分、債権等の資産、権益と、提供する融資・担保の総額を含む。

③プロジェクトの国家の利益と安全に対する影響分析

④投資主体によるプロジェクトの真実性声明

・プロジェクトが投資領域における技術進歩、構造の高度化、国際競争力の強化等やサプライチェーン発展等に対する影響を記入。

・経済成長、物価安定、就業促進、国際収支安定等に対し不利な影響がないこと、エネルギー調達やインフラ建設に対する影響について

・中国により国外投資を禁止するプロジェクト、輸出禁止資源、製品、技術、サービスに不利な影響がないもの

1-4. 銀行経由外貨管理局

(1)銀行による国外直接投資に対する審査

外貨管理局の《資本項目外貨業務手引き》(2024年版)による、企業の国外投資に際しての外貨業務登記時の審査資料は以下の通りです。

①書面申請及び《国外直接投資外貨登記業務申請表》記入提出。

②営業許可証

③国外投資の主管部門(商務部門及び発展改革委員会)による国外投資事項に対する許可・備案文書或いは異議無とする資料等。

④国外投資資金使用計画、国外投資決議文書等真実性を証明する資料

⑤前期費用送金が発生した場合、送金証憑。

審査の原則として、以下事項が挙げられています。

①国内外の合法な資産或いは権益を以て国外投資する場合に国外直接投資の外貨登記を行い、投資先の企業名称、所在地、中国企業の投資額及び出資方式を確認する。

②国外資金或いは資産により国外投資する場合、当該資金、資産の合法性を確認し

なければならない。

③複数の企業により国外投資する場合、ある一カ所の国内銀行より外貨登記後、そ

の他の企業所在地にて外貨登記を行う。

④外貨登記手続後、登記証憑に基づき企業が自ら資金手続きを行う。

⑤国外分子機構(代表処を除く)の設立手続きについて、国外直接投資の手続きに沿って行う。

(NAC国際会計グループ)
中国・アジアに23拠点・駐在日本人専門家60名・現地スタッフ240名の総合力で日系企業のグローバル展開を応援、高品質の会計総合サービスを提供しています。

※各種ご相談は下記まで。
本部:NAC Global Co., Ltd.
Suite 2408, 24/F., Tower 2, Lippo Centre, 89 Queensway, Hong Kong
Tel:2537-2146
Fax:2524-0110
E-mail:info@nac.com.hk
会社サイト:www.nac.com.hk
情報サイト:www.nacglobal.net

今なら無料 日刊香港ポストの購読はこちらから
香港メールニュースのご登録

日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから