アメリカでは政府の債務残高が2025年8月時点では37兆ドルを突破しています。国際通貨基金(IMF)によりますと2024年のアメリカの経済規模(稼ぐ力)を表す国内総生産(GDP)は29兆1849ドルで、1年に稼ぐ金額の126%の債務を抱えていることになります。債務上限の引き上げを米議会が承認するまでアメリカのトランプ大統領は米政府の活動を停止しました。さらに政府に従事する職員の人員削減や減給にも着手し始めているようです。これは異常事態と言ってもいいでしょう。(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)
1 近年は債務危機も経験
一方で日本の状況を見てみますと、日本の政府債務残高は2024年12月時点で1317
兆6365億円。2024年の国内総生産(GDP)は609兆2887億円ですので、対GDP比では既に216%に達しています。1年に稼ぐ金額の2.16倍もの債務を抱えているのですから、一般家計で言えば1000万円の年収に対して2160万円の借金を抱えていることになります。
重税や社会保障費の負担に加えて、家賃、或いは住宅ローン、食費、レジャー、学費等差し引くと、手元に残る資金はわずかになってしまうのではないでしょうか。このように政府レベルではアメリカよりも日本の政府債務残高の方が深刻です。
しかしながら債務残高を語る際には、資産も考慮しなくてはなりません。資産が債務を上回っていれば債務超過状態ではありません。ここでは資産を考えずに債務問題のみを取り上げてみます。資産のことを考えなくても政府債務が、大幅に縮小する方法があるのです。後述します。
日米だけでなく、欧州諸国も債務問題を抱えています。かつてはポルトガル(P)、イタリア(I)、アイルランド(I)、ギリシャ(G)、スペイン(S)といった財政危機にあった国々の頭文字を取って「PIIGS(ピーグズ)」と呼ばれていました。国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)は金融支援を決定しましたが、その条件として最も危機が迫っていたギリシャを始めとした各国に、増税、年金改革、公務員改革、公共投資の削減、公益事業の民営化等、非常に厳しい緊縮財政と構造改革を求めました。その後、欧州諸国は低成長時代に入っています。
2 「失われた30年」もここまで
何度も耳にした日本の「失われた30年」ですが、いよいよ低成長・債務問題から一歩踏み出せそうです。日本の政治でも10月の自民党の総裁選では積極財政政策・減税路線を推奨している高市早苗氏が自民党総裁に選出されました。日本の株式市場も彼女の政策に期待を込めて買いを入れ、日経平均株価は1日で2000円の上昇となりました。金融・経済のプロが高市さんを支持していることが理解出来ます。
それでは高市氏の積極財政政策にノーを付きつけている人達の理由は何でしょうか? やはり前述した日本の債務問題にを憂慮しているからに他なりません。日本も債務問題が深刻化して、一時的にでもアメリカのように政府機関が休業したり、職員がレイオフに遭ったりすることがあってはならないと考えているのでしょう。特に日本の財務省の官僚はそう考えているのかもしれませんね。
しかしながら金融のプロの目からますと、高市氏の積極財政政策が債務危機に陥るリスクは極めて低い、或いはゼロに近いと言わざるを得ません。
3 インフレで財源は自動確保
例えば100万円の銀行預金で年利3%の利息が付くと仮定します。しかしながらインフレ(物価上昇)率が4%であれば、預金していて3%の利息を受け取っても、購買力は低下しています。仮にデフレ下で、インフレ率がマイナス1%(つまり物価が1%安くなる)で年利3%の利息を受け取ることが出来るならば、1年後の購買力は4%増すことになります。
日本経済はデフレを脱却し、30年ぶりの本格的インフレ経済に移行しています。従いまして、日本の税収は何もしなくても自動的に増えていくのです。(自然増収)
例えば魚屋さんがウナギ1匹を2000円で販売していたとします。インフレ率が10%あればウナギの販売価格は、2200円になります。もちろん仕入れコストも1000円➡1100円に上昇してしまいますが、純利益も1000円➡1100円に自動的に上昇するのです。(理論上はこうなりますが、インフレのペースが速すぎますと、消費者の購買力が落ちて利益が減少することがあります)
日本の株式市場はそのインフレ(自動調節された利益)を先読みする形で上昇しています。そして今後も大幅に上昇していくことになります。株価1000円の銘柄であれば1100円に上昇するのです。
日本の税収も同じことで、適度なインフレがあれば自然増収によって財源が拠出されますので、どんどん積極的に財政出動をしていけばいいのです。
4 香港の財政は別の問題が・・・。
近年の香港の財政状況はあまり芳しくなく、剰余金を取り崩す傾向にあります。
香港の住宅市場の回復が遅れているのは、中国景気の低迷と米利下げが緩やかであることが影響しています。住宅価格は回復過程にあるものの2021年8月8日の191.34ポイントからは10月5日時点で140.27ポイントで26.7%安い水準に位置しています。
それでも世界的に見て香港の住宅価格は依然として割高であると言われています。香港特別政府も香港市民の不満にこたえるべく公共住宅の供給を増やす計画を発表しました。そして今後10年間で予測される総住宅需要419,100戸を満たすため、今後10年間で420,000戸の住宅供給目標を設定しました。香港政府・住宅局の広報担当者は2026年度から2035年度まで公営住宅と民間住宅の比率を70:30に維持するとしています。
しかしコロナ前までは香港政府の税収は住宅を含む不動産市場に頼っているところがありました。住宅市場の活性化によって税収増を図るという政府の目論見は大きく外れて、他の産業、例えば貿易、海運、投資、金融によって補完する必要があります。当面、香港では日本やアメリカのような債務問題とは無縁ですが、剰余金頼みの財政運営が続くようでしたら、『日米の仲間入り』を果たす日もそう遠くはないのかもしれませんね。
(資料)債務残高の国際比較(IMFより)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.pdf
「ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー」
ジュエリー:日本の軍事費は対GDP比で1.8%だそうよ。
アトム: トランプ氏の要求してた2%にはもうすぐやな。
ジュエリー:トランプ氏の要求は対GDPで5%よ。まだ道半ば。
アトム: 何やそれ? まるでペ〇ン師やなあ。
ジュエリー:トランプさんが来日した時にイタズラ仕掛けてみたら?
この間、国連総会の出席時に会場に向かうエスカレーターが静止したり、
演説の時にプロンプターが故障していたり。結構、笑えました。
アトム: 国連もなかなかやるなあ。世界平和には無力やけど、トランプ氏には
機能してたんか。まあ本気で怒るかどうか見たいわな?
ジュエリー:何言ってるの? そんなことしていたらGDP比5%では収まらないわよ。
アトム: でも高市さんの移民政策では気が合いそう。日本在住者もインバウンド
ブームでようやく本当の外国人との共同生活がどういうものか理解し始めたよな。
ジュエリー:オールドメディアは、「外国人による犯罪は年々減少傾向にあります」って
世論操作に余念がないけどね。
アトム: 違うねんて。日本在住の日本人は、日本文化の事を言うてんねん。
きちんと列に並ぶ・横入りしない、電車の中では静かに、ごみのポイ捨てはしない。夜中は静かにする。日本人にとっては当たり前やけどな。そういう日本文化を守りたいだけなんよ。
ジュエリー:あなた選挙に立候補したら? 町内会のね。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
香港在住。
1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。
ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。
香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。
香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。
著書多数。
https://www.icg-overseas.com/blog
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