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日本と中国の今を読み解く

激動の2025年

ロシア・ウクライナ紛争、終わらないイスラエルによるガザへの攻撃、米国のよるイエメンへの攻撃、他にも世界中で途切れることなく紛争が続いています。いつになったら世界から紛争・戦争はなくなるのだろう。

紛争からは距離を置く中国

ロシアとウクライナの紛争、イスラエルによるガザへの攻撃に関しても、中国は極力巻き込まれないように動いてきました。一方でアメリカは、第二次世界大戦後に起きた紛争の多くに関与してきました。中国人権学会が発表した統計によると、第二次世界大戦終結以降に起きた248件の武力紛争のうち201件は米国が始めたものであり、米国主導の同盟国や代理勢力を通じてこれらの戦争に参加することが多かった。既に皆さんが承知されているように、ロシアとウクライナの紛争もアメリカの代理戦争であることが明らかになっています。

pastedGraphic.pngアメリカが関与した戦争

アメリカが様々な世界各地で紛争を仕掛け、そして続けている間、中国は粛々と主にグローバルサウスの国々との二国間関係を強化してきました。「一帯一路」構想に基づき、物流の要となるインフラ投資などをメインとして経済協力を推し進めてきました。

2024年、中国は過去最高の輸出額と貿易黒字を記録しました。この結果は、アメリカやEUなどからの対中関税戦争にも大きな影響を受けずに乗り切っている状況を表しています。中国が紛争からは距離を置き、国内製造業の強化、貿易相手国・ルートの多角化を推進してきた結果なのでしょう。

「不動産不況」の現実

pastedGraphic_1.png上海地下鉄「莘庄駅」前

 

メディアでは頻繁に、「中国の長引く不動産不況」という話題を取り上げています。実際はどのような状況なのでしょう。

前号でも取り上げましたが、今の中国の不動産不況と言われる状況は、中国政府の(意図的な)コントロール下で起きています。「住宅は住むもの」とし、投資対象とすべきではないとの政府方針により、上がり続ける不動産価格を抑制する為に不動産関連企業への金融規制を行いました。※意図したバブル崩壊と私は見ています。

しばらく不動産市場の混乱は続きましたが、不良債権を抱えた民営不動産開発業者の持つ物件を国有企業へ移管するなどの対応を進めてきましたので、今年中には不動産市場も落ち着くでしょう。上海で私が住む家の近くにも新たに2軒も不動産屋さんがオープンしました。すでに徒歩5分圏内に5~6軒はあるのですが。

今しばらくは上海でも不動産価格が高騰するような動きは無いでしょうが、中古含む物件販売件数は徐々に増えていくのでしょう。※上海市郊外の物件などは値下がりが大きいですが、それもそろそろ落ち着くと思います。

不動産価格の高騰が止まったとは言え、上海市内の物件は普通のサラリーマンの手が届く範囲を既に超えています。上海では世界最長の路線網と言われる地下鉄が整っており、最近では郊外に家を買う若い世代の方が増えてきています。家から会社までの通勤時間が1時間~1時間半という人が多くなっているように感じます。

企業も事務所家賃が高いので、市中心部より徐々に離れた地域へと移動しています。地域にもよりますが、周辺地域の方が活気を感じる場所も多くなってきています。

事業戦略の組み立てミス

 中国で自社製品が売れなくなったと言う話が非常に多くなりました。かなり厳しい状況にある化粧品業界についての事例を見てみましょう。

よくある失敗例としては、思うように販売が伸びず、中国内に日本から輸入した商品を大量に抱えてしまい、それらを処分品として市場に出してしまう行為です。

日本とは異なり中国では化粧品の場合、使用期限(通常5年)を表示する事が義務付けられています。(日本の場合、一般化粧品に使用期限の義務付けはありません)

日本から輸入して2~3年を経過すると、それを代理店や販売店に正規で売ることが難しくなり、在庫として抱えてしまいます。本来は、それらの在庫は廃棄処分するかファミリーセールのような関係者のみを対象としたイベントなどで処分すべきなのですが、それらを処分品として安価に市場に出してしまう企業もあります。※ケース単位とかで。

結果どうなるかと言うと、数日後には淘宝(タオバオ)などに非常に安い価格で売られてしまいます。定価100元で売られていたような化粧品が、淘宝(タオバオ)で10元とか20元とかで売られるようになると、もう定価で売ることができなくなります。

今までの代理店や販売店も、その商品を取り扱う事を避けますので、代理店契約の解消などが加速します。自社製品の価値を自ら下げてしまい、販売ルートも絶たれる。もうこの時には手遅れでしょう。自らが招いた結果ですが、中国市場からは撤退するしかないでしょう。

中国での販売が好調なように装う為もあり、中国へ大量に輸出したと実績をアピールしている企業などがありますが、現実は現地に出口の無い大量の在庫を抱えてしまっている話は今まで何度か聞いてきました。

そもそも販売見込みが不確かな状況で中国へ輸出して現地で在庫を持つ事が間違っています。まずは、売れる仕組みを構築することに専念すべきかと思います。

まだまだ成長する越境EC

pastedGraphic_2.png名古屋市内のドラッグストア陳列棚

 

ここ2年ほど、私は日本と中国を毎月行ったり来たりの生活をしています。日本にいる時には定期的に訪日中国人(外国人)が多く訪れる場所に足を運び、彼らの動向をチェックしています。日本滞在時は名古屋をベースにしていますので、名古屋の「大須」と言う訪日外国人が多く訪れる地域へ行き、彼らが何に興味を示し、何を買っているかなどを自らの眼で確認しています。

大須にある某ドラッグストアの店長さんとは仲良くなり、色々と詳しい状況などもお聞きしています。最近、訪日外国人がよく買う商品などの情報を教えてもらい、自分なりに分析をしています。彼らが知らない(認知していない)商品を売るのは難しいのですが、すでに認知している商品を販売する場合にはハードルがかなり下がります。しかし、これらの商品は既に多くの方が日本から中国大陸向けに販売しており、新規で参入するのは困難です。

そこで私は、彼らが認知していないけども好むと思われる日本製品を分析し、彼らにどのように販売していくかというテーマにいま取り組んでいます。

マーケティングにお金をかけて販売するのではなく、あまり知られていない日本の中小企業が作った優れた商品を(あまりお金をかけない)他の方法で彼らに販売する仕組みを構築中です。次号では、もう少し具体的に新たな販売の仕組みについて記載したいと思います。

【筆者紹介】

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清水 泰雅(しみず やすまさ)

STECO GLOBAL LIMITED (香港)CEO、上海清環環保科技有限公司(STECO)董事長、安立飛商務信息諮詢(上海)有限公司 董事長

1961年愛知県名古屋市生まれ。90年より愛知県で空調ダクト洗浄の専業サービス業を創業。2005年、中国上海市に独資にて法人を設立後、今日まで中国ビジネスに携わっている。JETRO、自治体、証券会社などをはじめ彼らが主催する中国関連セミナーでの講演多数。2015年以降は、大手コンサルティング企業とも連携し、数多くの中国ビジネス案件に注力している。

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