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統計から読み解く 訪日香港人のトレンド

香港人の日本国内における宿泊状況

【はじめに】

2024年は、夏は暑く、冬は寒く、寒暖がはっきりとした年で、寒さは3月まで続いた。中旬以降暖かさも戻ったことから、桜の開花は平年並み、都内では平年と変わらずの3月24日、京都では同1日遅れの3月27日に開花を迎えた。近年は開花が早まる傾向にあったが、昨年は遅れ、今年は平年通りと、桜を目的に訪日する香港人には、いつが良いのか、頭を悩ませている所だろう。

京都、大阪での満開は4月4日で、ちょうど清明節の連休に当たった。当方の香港人の友人もちょうど大阪を訪れており、天気も良かったことから、タイミングがバッチリだったと、非常に喜んでいたのが印象的だった。

京都においては、昨年の宿泊者の外国人割合が半数以上を占め、この3-4月は、さらにその比率が高まっているのではと思うほど、特に欧米系の非英語圏の旅行者を多くお見かけする。

本号では、観光庁による宿泊旅行統計に基づき、昨年1年間の香港人の日本国内における宿泊状況について見ていきたい。

【2025年2月の訪日者数】

まず足元の香港人の訪日状況について、2025年2月は195,500人と前年同月比5.0%減であった。今年は1月、昨年は2月に旧正月があった事で、前年比マイナスとなったが、1-2月累計では、前年同期比12.0%増と、増加基調が続いている。なお、24年の前年比での伸び率は26.9%増であった。

JNTO香港事務所によると、前年同月と比較して地方路線を含む増便等の影響により航空座席数が増加したものの、前年は2月中旬からであった旧正月休暇が今年は1月下旬からとなったこともあり、訪日外客数は前年同月を下回った、と指摘している。

京都市内での香港人の宿泊については、昨年2月比で34.5%減と、訪日の5.0%減を上回っている。後述するが、24年通年での、京都「府」内での宿泊も、香港人は23年との比較で減少しており、京都の混雑ぶりの報道の影響からか、京都を避ける傾向が見られる。

【香港人の都道府県別宿泊状況】

観光庁では国、地域毎、そして都道府県毎に、宿泊者の統計調査を月単位で行っている。2024年通年でのデータが速報値として公表されており、香港人(香港特別行政区パスポート、BNOパスポート、いずれかの所持者)に関して都道府県別に集計を行った(図表1)。

香港人の日本国内での総宿泊数は、7,706,020人泊と、19年比で10.4%増、23年比で13.7%増と、コロナ禍前の19年の水準を上回った(23年は19年比で5.3%減)。

香港人の宿泊が最も多かったのは東京で、26%のシェアとなり、19年比でも42.6%増と好調が続いている。19年は東京を上回り、1位だった大阪は2位にダウン、23年比では0.9%増である一方、19年比では5.9%減と、コロナ禍前を割り込んでいる状況だ。

そして、これまで3位だった北海道が4位に後退、福岡が通年で初めて3位となった。福岡は、19年比で72.3%増、23年比でも47.0%増と好調に推移している。なお、北海道も大阪と同様、コロナ禍前を回復していない状況で、19年比で13.2%減である。

上位の10都道府県について24年と19年の顔ぶれを比べてみると、19年は7位だった鹿児島が18位に、9位だった千葉が12位とトップ10を外れた。24年は、19位だった神奈川が8位に、13位だった熊本が10位に上昇した。神奈川は、横浜というよりも箱根での宿泊が伸びた影響で、大きく順位を上げたと考えられる。

トップ10の中で、23年比で唯一減少しているのが京都(府)である。元々香港人の関西での滞在の傾向は、大阪に宿泊し、京都には日帰りもしくは1泊と短かったが、コロナ禍後は、京都に連泊するスタイルがトレンドになった。結果として、京都の宿泊は24年も、19年比で57.8%増と上回っているが、23年比で今回減少と、京都離れが起きつつある。

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 訪日香港人都道府県別宿泊者数 (20241-12月期) 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

日本全体としては、香港人の宿泊数は増えている一方で、上位でも大阪や北海道、沖縄が19年の水準を回復していないなど、まだまだ喜べない地域も多い。19年水準を回復していない道府県を抽出すると、過半数を超える28となった(図表2)。

直行便が飛んでいたエリアで、まだ便数が戻っていなかったり、便自体が再開していない事が大きな要因だ。

19年比で減少が最も大きいのが宮崎で、鹿児島が続く。鹿児島は、19年までは香港航空と香港エクスプレスの2社が乗り入れていたが、現在は香港航空のみとなっており、便数は19年の半分程度である。

3位の島根、4位の鳥取も、米子空港にチャーター、24年10月から大湾区航空が定期便

を就航したものの、通年で飛んでいた19年と比べると不利になった形だ。

その中で、23年比で最も高い伸びを示しているのが広島である。19年比で39.6%減と、19年比では9番目に悪い数字である一方で、23年比では119.3%増と、倍増している。香港エクスプレスが、24年11月から広島便を再開したこと、大阪や福岡に入った香港人をいかに広島に向かせるか、航空会社やJR、OTA(オンライン旅行会社)との連携が功を奏した形だ。

19年比で28の道府県がまだマイナスというのは、まだまだ伸びる余地があるということでもある。そういった道府県への需要の分散で、香港からの訪日は、2025年も穏やかながら、増加することは間違いないだろう。

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 訪日香港人都道府県別宿泊者数 (20241-12月期) 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

【香港人の地域別宿泊状況】

次に、各地方別に集計を行い、2019年、2023年、2024年を比較したものが図表3である。

全体的な傾向として、19年との比較で、関東のシェアが高く、北海道、沖縄のシェアが低下していることは、23年から大きな変化はない。それ以外の地域では、東北、中部、九州が19年との比較でシェアが伸びている。九州は3位に福岡、10位に熊本が順位を伸ばしたとおり、トレンドとなっている。

東北は、東日本大震災の影響から、11年以降低迷していたが、コロナ禍を経て需要が戻り、23年12月に大湾区航空、その後、香港航空、香港エクスプレスと、3社が仙台に直行便を就航するなど、今年一番の注目エリアである。

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訪日香港人地方別宿泊者数 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

【4月の京都市内の様子】

4月に入り、桜が満開を迎え、日本人、外国人観光客も、さらに多くお越しいただけている印象で、それぞれの表情が非常に明るいのもうれしいところだ。東山や金閣寺周辺等、バスの混雑が報道されて久しいが、最近はレンタサイクルを利用する外国人観光客を多く見かけるようになった。近所のレンタサイクル屋さんにも、朝から貸し出しを待つ外国人が多く来店している。混雑を避け、小回りのきく自転車は、京都観光には最適で、次回京都にお越しの際には、利用を検討してみてはいかがだろうか。

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高瀬川一之舟入付近 (202549 筆者撮影)

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祇園白川 (202543 筆者撮影)

【筆者紹介】

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清水 泰正(しみず やすまさ)

Japan Tourism Research & Consultancy Limited 代表取締役社長

14年間の日本政府観光局勤務を経て、インバウンド誘客に関する戦略コンサルタントとして独立。シンガポール、香港に計9年間の駐在、現在、京都市観光協会アドバイザー、広島県観光連盟アドバイザー、(社)日本フォトウェディング協会顧問。

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