近年、香港税務局(IRD)は、行政手続きの効率化と国際的な税務コンプライアンス強化を目的に、さまざまな税務関連手続きのオンライン化を進めています。こうした動きの一環として、2025年11月より中国本土との租税協定(二重課税防止の取決め)に関する「居住者証明書(Certificate of Resident Status, CoR)」の電子版発行が開始されました。これにより、従来紙で発行・郵送されていた証明書がPDF形式で入手できるようになり、申請から取得までのスピードと利便性が大きく向上します。本稿では、この電子版CoR制度の概要と申請プロセス、実務上の留意点について解説します。
(デロイト トウシュ トーマツ 香港事務所 関本 崇)
オンライン申請手続き
CoRの申請はこれまで郵送または窓口で行う必要がありましたが、今回の制度変更により、IRDの新タックス・ポータル(Individual Tax Portal/Business Tax Portal/Tax Representative Portal)からオンライン申請が可能になりました。
1回の申請で最大3年分までの居住証明を申請できます。
適正な申請書が受理されると、通常21営業日以内に発行。承認後、電子版CoR(PDFファイル)は、申請者のポータルアカウント内のメッセージボックスに送信されます。
なお、法人等で事業登録番号を持たずアカウント開設ができない場合は、IRDから発行される90日間有効の一時アクセスコードを利用してダウンロードすることも可能です。
真正性の確認と国際的信頼性
電子版CoRはPDF形式で発行されますが、相手国の税務当局は「eProof」ウェブサイトを通じて、その真正性をオンラインで確認できる仕組みになっています。これはペーパーレス化と同時に、国際信頼性の確保という観点でも重要な一歩です。
一方、日本も含め他の租税協定に基づく申請については、従来通り、紙による申請、証明書が郵送または本人受け取りの形で発行されます。
対象・留意事項
IRDは、「協定の存在する国・地域に限り、その協定に基づく租税優遇措置を目的とする申請の場合のみCoRを発行」する点を再確認しています。協定のない国との取引や税務目的以外での申請には、発行されません。また、香港への再登記を完了した企業は、香港内で設立された法人として多くの協定上「香港居住者」に該当し、手続きを経てCoR申請が可能になります。
まとめ
今回の電子化は、IRDの税務デジタル化戦略の一環であり、行政手続きの効率化・書類の真正性強化・国際的な税務コンプライアンスの円滑化を目的としおり、特に中国本土との経済活動が盛んな企業や香港納税者にとって、より迅速で安全な税務対応を可能にするものとなるでしょう。また税務ポータルの登録と、電子サービスへの対応の他、CoR要件を満たしているかについては、必要に応じて専門家にご相談されることをお勧めします。
筆者紹介
独立系証券会社を経て2007年にオーストラリアの会計大学院を卒業後、Deloitte Touch Tohmatsu香港事務所入所。日系企業の会計監査、税務アドバイザリー、香港進出サポート業務に従事。その他、香港のベーカリー・レストランチェーンにおいて経営の見える化、業務改善、業務管理体制構築の経験を有する。在香港歴は17年。
香港公認会計士、オーストラリア公認会計士、英国勅許管理会計士
MBA (Manchester Business School)
会計学修士 (Australian National University)
日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから。





