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令和 政経ミステリーゾーン

トランプ関税が中国経済の重石に

8月初旬に世界に向けて一斉にスタートしたトランプ関税が、世界経済の成長に影を落とし始めています。それに先立ち、国際通貨基金(IMF)の予測では2025年の世界経済の成長率を0.2ポイント引き上げて3.0%、2026年を0.1ポイント引き上げて3.1%としています。この上方修正によって私達の生活も豊かになると実感できるタイミングが来るのでしょうか?(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)

1 世界経済は低成長へ

実はこの世界経済の成長率の上方修正は当初、アメリカのトランプ大統領が各国に『提案』していた関税率が交渉や譲歩を通じて米国の関税実効税率が24.4%から17.3%に低下したものによるものです。どういう事かと申しますと、例えば日本の自動車関税の場合、もともと2.5%であったものがトランプ大統領に25%を上乗せ、つまり27.5%と発表されました。その27.5%をもとに世界経済の成長率が試算されていました。ところが日本は交渉を通じて27.5%の関税率が15%にまで低下したのです。整理しますと2.5%⇒27.5%⇒15%で妥協となるのですが、もともと2.5%の関税率であったものが、15%に跳ね上がる訳ですから世界経済の見通しが悪くなるのは仕方がありません。これらの動きがアメリカと各国の間で見られたのです。しかし上方修正をしたのだから景気は持ち直すと見られがちですが、実は歴史的に見て(コロナ期を除く)世界経済の平均成長率は、3.7%程度あったのです。世界経済の2025年の3.0%成長、或いは2026年の3.1%成長はかなり低い水準に留まる予想と言えるでしょう。この成長率の低下の要因としては中国の経済不振が影響しているのは間違いありません。

2 中国の経済対策に期待

中国本土では不動産市況の低迷、若者の失業率の高止まり、歯止めの掛からない少子化、消費不振によるデフレ、そしてそこにトランプ関税が重く圧し掛かってきています。中国の8月の輸出額の伸び率は、前年同月比4.4%増となりましたが、7月の同7.2%増から減速しています。これは米国のトランプ関税によって中国の原材料・製品・商品の輸出が不振に陥ったからでしょう。中国の対米輸出額を見てみますと7月は前年同月比21.6%減から8月には同33.2%減へとさらに悪化しています。バンクオブチャイナの見通しでは、9月の輸出額は2-3%程度さらに悪化すると予想されています。

一方、輸入の方を見てみますと7月の4.1%増から8月は1.3%増に鈍化しています。これは中国国内の内需が低迷していることを意味します。つまり中国経済には需要の低迷によって物価が下落するデフレ圧力が掛かってきているものと見られます。そこで中国の消費者物価指数(CPI)を見てみました。5月は前年同期比‐0.2%、6月は同‐0.1%、7月は+0.4%といったんは持ち直したものの、8月は再び0.0%と物価水準はデフレ気味に推移しています。

しかしこの傾向は世界のどこかの国で見たことがありますよね?そうです。私達が長期間に渡って経験したデフレ経済です。日本はその長期的な経済不振を「失われた30年」と呼ばれてきました。物価の下落が企業の売り上げの減少を誘い、利益が縮小します。そして企業は事務所を縮小したり雇用調整を行います。従業員の給与も減少・据え置きして人件費を圧縮するスパイラルです。

もちろん中国経済が長期間デフレで低迷するということを意味しているのではありません。中国は共産党政権の鶴の一声で景気対策もすぐに出来る国です。日本のように合議制で結論が出ず、改革を何十年も(今も)先送りしませんので日本のような轍を踏む事はないと思います。しかしながら短期的には中国経済の不振が世界景気の成長にも影響することは間違いありません。

3 市場の反応

香港株式市場のハンセン指数は、年初から9月20日までに32.33%も上昇しているのに対して、上海株式市場は13.97%の上昇に留まっています。香港と中国本土の一体化が進んでいるにも関わらず、このパフォーマンスの違いは何でしょうか? 中国本土の投資家は国内の中国株よりも、より国際的なマネーの集まる香港株に積極的に投資をしています。本土の状況を理解している地元の投資家は国内株よりも国際的に活躍している香港の上場株に投資をしていました。

ところが8月28日に、中国本土投資家は1日としては過去最大の売り越し額、204億香港ドル(約3850億円)を記録しました。その後も香港株が堅調に推移しているところを見ますと、本土投資家による香港株の売却は、「近い将来香港株が下落する」という予想のもとの行動ではなくて、「現金化する必要に迫られた」と見るのが妥当ではないかと考えます。最近になって中国本土の不動産価格が再び下落基調に戻ってしまったという大手金融機関のレポートが出回っていましたが、その不動産ローンの返済やその他の債務の返済に、利益の出ている香港株の売却益で穴埋めを図っているのでないかとの憶測が出ていました。

4 トランプ関税の影響はこれから

中国本土では景気減速に伴い、貸し出し金利の低下に伴い、預金金利も低下傾向にあります。そして不動産関連の融資が焦げ付くケースが心配されています。不動産融資に関しては金融機関ではなくむしろ貸付を目的に設立されたノンバンク(融資平台)の方が心配で、金融機関が懸念すべきは、利ザヤの低下が収益に与える影響でしょう。仮に利ザヤが低下して収益が悪化する場合、金融機関は企業や個人の

住宅ローンへの貸付を縮小するでしょうし、かつての日本のように「貸し渋り・貸し剥がし」といったことにもなり兼ねません。そうなると経済全体にも悪影響を及ぼし兼ねません。中国の大手4大銀行の2025年6月末時点の不良債権残高は合計で約1兆3900億元(約29兆円)と、2024年末比で6%増ですが、貸し出しに占める不良債権の比率はまだ1.3%程度です。もちろん査定の甘さを指摘する専門家がいるのは承知していますが、今のところすぐに金融機関が経営危機に陥るということはなさそうです。これから年末に掛けてトランプ関税の重石が加わった中国経済の動向から目は離せなくなりました。中国景気の低迷は日本にも大きな影響を及ぼします。

(資料)中国の消費者物価指数(CPI)

https://jp.tradingeconomics.com/china/consumer-price-index-cpi

 

ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー

ジュエリー:石破さん、やっと辞めたね。石破さんも新人議員たちに10万円の商品券を

配ったり、裏金議員を非公認にしながら

結局、2000万円ずつ選挙資金を配布した訳だからアンタも?って有権者はね。

アトム:  もっと笑ったのが世論調査。選挙後に石破さんの支持率が回復(もちろん不

支持の方が多かった)したアレ。

ジュエリー:オールドメディアの調査方法に大きな問題があったのよね。固定電話に掛け

るって昭和の時代じゃなくて今は令和。携帯電話に掛ければいいのよ。

アトム:  あれはね、「世論調査」ではなくて「世論操作」やね。

ジュエリー:でも若い人たちは情報リテラシーがあるので、ネットやSNSで色々な情報に

接して真相を確認出来るからいいね。

アトム:  オールドメディアの総裁選のターゲットは「高市さん」でしょう。進次郎

さんに対する持ち上げ方が半端ないやん。

ジュエリー:そこで進次郎さんに質問です。お米の収穫を増やす具体策は?

アトム:  お米の収穫を増やすには、まず田んぼを増やさなければなりません。

その上でお百姓さんの数を増やすこと、それが重要です・・・。

ところで「香港ポスト紙」も今やレジェンド・メディアやけど、オールド

メディアに入るんかなあ?

ジュエリー:誰も気にしていないでしょ。

筆者紹介

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沢井智裕(さわい・ちひろ)

香港在住。

1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。

ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。

香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。

香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。

著書多数。

https://www.icg-overseas.com/blog

https://atlascapital.hk/

 

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