昨年、1年間で最もパフォーマンスを上げた金融商品は、アメリカ株でも中国株でもありませんでした。ゴールド(金地金)でした。世界の地政学的なリスクが高まる中、今年も投資家は安全資産を求めて、ゴールドを中心とした商品を中心に展開するはずです。この男がいる限りは・・・。(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)
1 今年もこの男に振り回される
1月3日、トランプ米大統領の指示で米軍がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束しました。
作戦「絶対の決意」のもと、わずか2時間少々での出来事に世界は驚愕しました。米軍の戦闘機が100機以上、飛来してきたにも関わらず、不思議なことにベネズエラの防空システムは全く作動しませんでした。アメリカの大義は、「麻薬密輸の撲滅」です。特に問題視されていたのが、アメリカ国内で深刻な健康被害と多数の死者を出している合成麻薬フェンタニルの流入阻止でした。ベネズエラ側に100名以上の犠牲者が出ているにも関わらずアメリカはこの軍事行動を強引に正当化しています。
また諸外国からは独立国家の主権侵害を理由に国際法違反との声も聞かれます。もちろん国際法を守らない独立国家は世界に無数にあります(しかも懲罰なし)ので、今回のアメリカに対して「国際法云々」を問題にするのは、あまり意味をなさないとは思いますが・・・。
トランプ氏が2025年1月20日に第47代米国大統領に再選して以来、世界は「トランプ
劇場」に一喜一憂する場面が多々ありました。貿易相手国の同意を得ずに一方的に「トランプ関税」を導入し、ロシアのウクライナ侵攻ではロシア側に有利な条件を提示して仲裁に入る欧州諸国の意向は無視。挙句の果てに北大西洋条約機構(NATO)加盟国の
欧州各国に対しては軍事費の大幅な負担増を求めました。またメキシコやカナダといった
隣国とも無用な摩擦を作り、「カナダはアメリカの51番目の州」、「メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更する」といった突拍子もない発言で両国間の関係を悪化させてきました。
2 米ドルの急落があるかも?
アメリカは中露との関係を拗らせているだけでなく、同盟国の欧州同盟(EU)や関係の深い国々との信頼関係を失いました。国家間の関係だけでなく個人の間でも信頼関係を築くには数年、数十年を擁しますが、信頼を損ねるのはホンの一瞬です。
今や世界を見渡してもトランプ大統領の言動を100%信用している国家はありません。仮にそのような国が存在するのであれば、それこそ「お花畑状態」というものです。トランプ大統領の口癖である「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(MAGA)」という言葉は、
まさにアメリカにとってのお花畑です。
しかし心配は無用です。まもなくトランプ政権が考えるような法案は通らなくなります。共和党の議員の中でも造反する議員が多く出て来ています。もとより米国民の支持率の低下が鮮明となっており、トランプ氏の不人気は海外だけでなく国内でさらに浸透しています。トランプ氏の国内での支持率を見てみますと、ロイター通信(調査期間1月4日から5日)は支持が42%、不支持が55%、CBSニュース(同1月5日から7日)は支持41%、
不支持59%。そしてニューヨークタイムズも1月10日時点で支持が43%に対して不支持は55%と苦戦中です。各社の調査も時間を追うごとに「不支持」が増加中です。
3 商品価格は上昇する
このような状況下、年初来、米株式市場では昨年、高騰したAI関連銘柄や半導体関連株の人気が下火になっています。既に米ドルに対する『不信認』はマーケットに顕在化していますので、米株式市場から他市場へと投資資金が移動するタイミングに来ているのかもしれません。
ロシアと中国はアメリカとの距離を置く為に自国通貨の信用度を高めています。貿易等で
得た外貨準備で保有している米ドルを売却し、継続して金(ゴールド)の現物を購入しています。これはロシアと中国に留まらず他のアメリカを信用していない発展途上国も同様
の行動を取っています。ここ数年、米ドルに対して弱い主要通貨は日本円、インドルピー、韓国ウォンの3通貨ぐらいのものです。
そういう意味では今年は「安い通貨の逆襲」があるのかもしれません。長期で見れば円安トレンドは変わらないかもしれませんが、今年は1日に10円、円高に動くような局面があるのかもしれません。ほとんどのマーケット参加者は円安を予想してポジションを構築していますので(円売り・ドル買い)、いったんトレンドが変われば1ドル=130円割れといった場面があるのかもしれません。
そして「モノとカネ」という観点で見ますと、世界の主要通貨ドルの信認が低下するということは、相対的にモノの価値が上がり、つまり価格は上昇するはずです。代替通貨として選好されるゴールドの動きを見ておりますと昨年、ゴールドの価格は63.7%上昇し、投資資産の中ではもっともパフォーマンスの高い資産となりました。香港ハンセン指数の+30.8%、日経平均株価の+26.2%、米S&P500指数の+17.7%をも上回ったのです。
4 ゴールドは10000ドルへ
現在、1オンス=4800ドル前後のゴールドですが、ドル安が続くと仮定しますと上値はまだまだありそうです。専門家の中には既に1万ドルを目指しているという声も上がっています。例えばウクライナ紛争によって地政学的リスクが高まる中、ロシアは戦闘が経済対策になってしまっています。ロシア経済が潤っているのは、ウクライナ戦線の長期化によって軍需産業が潤っている事が背景にあります。国際通貨基金(IMF)のデータによりますと2023年は4.08%、2024年は4.34%と欧米諸国よりも高い成長率を達成しています。
もちろん戦闘を中止・停止してしまうことは、天然資源以外に目立った産業のないロシア経済にとっては死活問題になります。
そしてトランプ大統領は、今後軍事費を5000億ドル増強すると宣言しました。つまり武器・弾薬・戦闘機・戦艦に欠かせない材料であり、かつ現時点でさえ大幅に不足している金、銀、銅の需要増は計り知れないということです。今年もマーケットのボラティリティは高まりそうです。
(資料)トランプ大統領の支持率
https://www.nytimes.com/interactive/polls/donald-trump-approval-rating-polls.html
ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー
ジュエリー:ベネズエラでは、国民3400万人のうち800万人ぐらい国外に退去している
そうよね。日本の人口で言えば、3000万人がいなくなったのと同じ割合よ。
アトム: なにそれ? 東京と神奈川の人口より多いって?
昔、日本にも農民が領主に対する抵抗手段で村から人がおらんようになる
「逃散」ってあったけどな。そんな感じかな?
ジュエリー:ベネズエラが落ち付きを取り戻したとしてもトランプ氏は次に裏庭のコロン
ビア、そしてデンマーク領のグリーンランド自治政府、イランへの攻撃も
辞さないとか言ってるので、まだまだ動乱は終わらないよ。
アトム: なんや、やってることは全然、世界平和と逆行してるやん。
ジュエリー:去年、ノーベル平和賞が獲得できなかったので、スウェーデンに対して
「逆切れ」してるって話よ。
アトム: 子供のケンカやないんやから。アカンて。
まあ、どうでもいいけど個人的な不満をベネズエラとかグリーンランドと
いった周辺諸国に持ち込まんといて欲しいわな。
ジュエリー:でもトランプ大統領も支持率低迷で必死なのよ。共和党内支持者の間でも
米国の不人気はトランプ氏のせいと思っている人が多いのよね。
このまま行くと、中間選挙は共和党が大敗してトランプ氏は「レイムダック
(死に体)状態」に陥ってしまうかもね。
アトム: ハハハ、レイムダックやなくてこれがホンマの「ドナルド・ダック」やわ。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
香港在住。
1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。
ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。
香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。
香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。
ドラゴンゲート株式会社の海外特別顧問、投資兼財務戦略アドバイザー。
著書多数。
https://www.icg-overseas.com/blog
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