香港と中国本土の政治・経済・社会ニュースを日本語で速報します
寄稿

4大トレイルイベント、25年は15人が挑戦=日本人3人は「生還」

【寄稿】4大トレイルイベント、25年は15人が挑戦=日本人3人は「生還」

pastedGraphic.png

総距離298キロの4大トレイルコースの完走に挑むイベント「Hong Kong Four Trail Ultra Challenge(フォー・トレイル・ウルトラ・チャレンジ=HK4TUC)」が、去る1月29日から2月1日にかけて、香港で開催された。今年は香港、中国本土、日本、ネパール、マレーシア出身の男女計15人が参加し(日本からは同3人)、午後10時前にスタートした。

毎年春節(旧正月)に開催。60時間以内に完走すれば「完走者(フィニッシャー)」、72時間以内であれば「生還者(サバイバー)」となる。賞もメダルもなく、順位の発表もない。コースは麥理浩徑(マクリホーストレイル、100キロ)、衛奕信徑(ウィルソントレイル、78キロ)、港島徑(香港トレイル、50キロ)、鳳凰徑(ランタオピーク、70キロ)を逆走するもので、コース間での移動以外、原則自力でゴールを目指すのがルールだ。

2012年に香港在住のドイツ人、アンドレ・ブルンベルグ(Andre Blumberg)さんが発案・創設したHK4TUCはチャレンジとある通り、タイムを競うレースではなく、あくまで自分自身の挑戦としての位置付けだ。独特なルールはこれまでに何度か変更され、音楽やストック、痛み止めの使用禁止に、今年は腕時計の着用禁止も加わった。スタート時刻は6時間前に発表され、前年の12時間前より早まった。

ただ、こうしたルール変更も理解した上で、ランナーは応募している。実際、長ければ丸3日間にも及ぶ時間(出発当日の準備を含めるとそれ以上の時間)寝ないで走り切るとは、一般人には想像を超える過酷さだ。だが、だからこそランナーは自分自身と向き合うしかなく(意図的にそうした状況を生み出し)、自分の体力、精神力、経験、感覚、運の全てが集約され、研ぎ澄まされていくのだろう。

今年は結局、11人が「生還者」として、ゴールの大嶼山(ランタオ島)・梅窩(ムイオー)フェリー乗り場前にある緑色の郵便ポスト、通称「ムイオーポスト」に2月1日夜までにたどり着いた。日本人ランナー3人も無事に完走した。

pastedGraphic_1.png

ゴールのムイオーポストで笑顔を見せるネパール人ランナー、ヌゴ・ヤマナス・リムブ(Nugo Yamanath Limbu)さん=2月1日午前10時40分ごろ

海外のウルトラトレイルレース経験もある日本人ランナーの一人、脇屋貴司さん(41)はゴール直後、「完全セルフサポートなこともありきつかった」とコメント。「(移動時の)ドライバーとクルーを見つけるところからはじまり、土地勘のないトレイルでの行動や補給の計画に難しさを感じた」と振り返った。

参加動機に関しては、「仕事と生活が安定する中、難しい挑戦をする自分を忘れてしまっていた。もう一度本当の意味での挑戦をしたいと思った時に、このレースのことを思い出した」と語った。

香港の山を歩いたのは今回が初めてだったとしながらも、「『サポートなし』という言い方をしているが、トレイル上で応援してくれる人がいたり、名前を呼ばれたりすることもあり、すごく力になった」と述べた。コミュニティーの結束力の強さも感じたという。

イベントは今年で14回目を迎えた。香港に根差し、手づくりで企画・運営を続けてきたアンドレさんら関係者の熱意や努力があってこそだろう。徐々に認知度が高まる中、今年1月2日にはHK4TUCを題材にしたドキュメンタリー映画「香港四徑大歩走(FOUR TRAILS)」が上映され、好評を博している。ますます注目されていく可能性があるが、今後もイベントの初志を貫いていってもらいたい。

pastedGraphic_2.png

ゴール地点にある緑色の丸型ポスト、通称「ムイオーポスト」は英国統治時代の名残だ

(フリーライター・辻真輝)

今なら無料 日刊香港ポストの購読はこちらから
香港メールニュースのご登録

日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから