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統計から読み解く 訪日香港人のトレンド

昨年7-9月期の香港人の日本国内での消費動向

【はじめに】

今冬の京都は、平年よりも寒さが厳しく、2月初旬には市内中心部でも積雪となった。2月中旬以降、一気に暖かさが戻り、10度を超える日が続いている。桜の開花は、平年並という予測で、京都では、開花が3月24日頃、満開は4月1日頃と予測されている(2月中旬のウェザーマップ社発表)。

旧正月時期は、香港、台湾、韓国のお客様を京都市内で多く見かけ、普段は欧米人の存在感が大きい中で、旧正月らしさを感じる事が出来た。中国本土からの来訪者も、個人客を中心に見かけた。中国の渡航自粛要請に関する影響について、市内宿泊業者を対象とした京都市観光協会の調査によると(調査時期2025年12月26日から2026年1月12日)、旧正月期間中宿泊への影響について、「予約が大幅に減少している」と回答した施設は12.3%であった。「予約がやや減少している」が49.1%、「ほとんど変わらない」が31.6%と、影響は限定的な事が分かる。

本号では、昨年7-9月期の、香港人の日本国内での消費動向について、前年同期や前期との比較で、「地震の噂」の影響下での消費行動について見ていきたい。

【2025年の訪日者数】

昨年12月の訪日香港人数は291,100人と、8ヶ月ぶりに前年プラスを回復するとともに、単月として過去最多を更新した。「地震の噂」の影響により、2025年5月から前年同月マイナスが続いていたが、ようやく上向いた形だ。また、この12月がプラスの数字を見る限り、中国政府による日本への渡航自粛要請について、香港は影響していないことが分かる。

2025年通年では、2,517,300人(推計値)と節目の250万人は超えたものの、前年比では6.2%減と、過去最多を記録した24年の268万人には届かなかった。

国・地域別での訪日者数は、1位が韓国(946万人)、2位が中国(910万人)、3位が台湾(676万人)、4位がアメリカ(331万人)、5位に香港の252万人が続いた。

【2025年7-9月期の訪日外国人の消費動向】

観光庁の「インバウンド消費動向調査」を元に、昨年7-9月の期間、国、地域別で、日本国内での消費額(1泊当たり単価)を算出した(図表1)。

「地震の噂」影響により、香港からの訪日者数は減少した一方で、消費については、国・地域別でもトップと、日本国内での消費は落ちていないことが分かる。

また、費目別に見た香港人の消費について前年同期と比べると(図表2)、1泊当りの総消費額では、24年同期を0.8%上回っており、ここからも消費が落ちていないことが示されている。日本国内での宿泊数が1泊減少している影響で、訪日1回当りの総消費額では12.7%減となっている。

費目別では、宿泊費、飲食費が10%程度上昇しており、日本国内での宿泊費や物価高騰が影響していると考えられる。交通費が14.4%のマイナスで、滞在日数が減少したことから、長距離の移動を控え、出入国の空港周辺を中心とした周遊が多かったと予想される。

買物代についてもマイナスとなっており、前年同期比3.1%減と、減少傾向にある。前期2025年4-6月期も、前年同期比で買物代が36.6%減と突出してマイナスとなっており、今後の動向について注目する必要がある。

pastedGraphic.png図表1 国地域別1泊当たりの消費単価(2025年7-9月期) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

 

pastedGraphic_1.png図表2 香港人の1泊当たりの費目別消費単価(2025年7-9月期) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

 

【香港人による買物】

次に香港人による日本国内での買物品目について、購入率と購入者における品目別の購入単価について集計を行い、前年同期比を示したものが図表3である(1泊当りではなく、滞在中の総額)。

購入率は、前年同期と比較し低下している品目が多く、「その他食料品、飲料、たばこ」、「化粧品、香水」、「靴、かばん、革製品」がそれぞれ5%以上のマイナスとなっている。最も購入率が高い「菓子類」も2.7%とマイナスとなっている。

購入単価も全体として低下している中で、「民芸品、伝統工芸品」、「音楽、映像、ゲーム」が25%程度増加しており、「地震の噂」の中では、日本文化への関心度合いが高い層の訪日割合が高かったと説明出来るだろう。逆に減少幅が大きかったのが、「時計、フィルムカメラ」の67.9%減、「宝石、貴金属」の42.3%減であった。

pastedGraphic_2.png図表3 香港人の購入品目(2025年7-9月期)  出典: 観光庁 訪日外国人消費動向調査

 

【香港人による交通機関、娯楽サービスの利用】

読者の皆様なら、香港の7-9月が、学校の夏休み期間に当たることはよくご存じだろう。香港人の訪日も大きく伸びるシーズンに当り、その中での「地震の噂」であったため、大きな影響が出た。

娯楽サービス費から見ていくと、「テーマパーク」利用率が4.4%減と最も大きな減少で、購入単価も16.3%減となっている。これは、夏休みの子供を連れての旅行需要が減少したことを示唆していると考えられる。

一方、利用率の変化は小さいものの、単価が上がったのが「スポーツ観戦」、「ゴルフ」、「温泉、温浴施設、エステ、リラクゼーション」、「マッサージ、医療費」だ。スポーツ観戦で3倍近い183.3%増、ゴルフが141.1.%増、、温泉・エステが127.8%増、マッサージが41.0%増と、より大人が利用するアクティビティにおいて、前年同期以上に消費していた事が分かる。

利用率では、「現地ツアー、観光ガイド」が3.0%増加しており、現地発ツアーに参加したり、ガイドをつけることで、万が一地震等が発生した際のリスク回避を図っていたとも推察できる。

交通費では、「新幹線、鉄道、地下鉄、モノレール」の利用が3.4%減少と最も高くなっている。単価も1割下がっていることから、新幹線を使った長距離移動が減少したと考えられる。レンタカーについても、利用率が0.6%減に対し、単価は25,6%減少しており、利用期間の減少と考えられ、こちらも長距離移動が減少した影響ではないだろうか。

2023年10月に値上げとなったJRパスについては、値上げ直前の23年7-9月期の利用率が8.0%だったが、今期25年7-9月期においては4.4%と大きく利用が減少している。

pastedGraphic_3.png図表4 香港人の交通、娯楽サービス品目(2025年7-9月期)  出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査

 

【1、2月の京都市内の様子】

中国の渡航自粛要請の影響から、京都市内の人出が減っているのでは、という質問を京都外の方からよく聞かれるようになった。元々中国からの団体客の宿泊が少ない京都は、先述の調査結果の通り、大きな影響は受けていない。街中では、中国の個人客含め、多くの外国人で賑わっており、大きく人出が減った様には感じられない。

これから迎える桜の時期、イースターと、中国からのお客様への影響は多少あるものの、今年も京都に多くのお客様が訪れて下さることが予想される。

pastedGraphic_4.png図表5 下御霊神社の白梅 (2026年1月23日 筆者撮影)

 

【筆者紹介】

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清水 泰正(しみず やすまさ)

Japan Tourism Research & Consultancy Limited 代表取締役社長

14年間の日本政府観光局勤務を経て、インバウンド誘客に関する戦略コンサルタントとして独立。シンガポール、香港に計9年間の駐在、現在、京都市観光協会アドバイザー、広島県観光連盟アドバイザー、(社)日本フォトウェディング協会顧問。

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