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統計から読み解く 訪日香港人のトレンド

香港人の日本国内での宿泊状況

【はじめに】

2022年の10月の訪日インバウンド再開から、3年が経過、香港からの訪日者数は、昨年2024年は268万人と過去最高を記録した。

25年は、春先からの日本での「地震の噂」の影響により、5月から前年同月比でマイナスを記録しており、11月まで7ヶ月連続でのマイナスとなっている。

日中関係の影響から、香港からの教育、文化交流の団体に影響が出ているが、個人旅行は引き続き好調のようだ。先日大阪市内を訪れた際には、道頓堀の戎橋のところで、香港人カップルに出会うなど、広東語を聞く機会も多かった。

本号では、観光庁による宿泊旅行統計に基づき、2025年1月から9月までの、香港人の日本国内での宿泊状況について見ていきたい。

【2025年11月の訪日者数】

まず、香港人の訪日状況について、2025年11月は207,600人と、24年同月比で8.6%減、19年同月比では4.0%増で、冒頭の通り、7ヶ月連続で、昨年同月を下回っている。

また、1-11月の累計では223万人と、24年同期比で7.2%減となっている。25年通年でも昨年を下回るのは確実で、250万人前後が予想される。

1-11月の累計、各国、地域との比較では、訪日が最も多いのが中国の877万人、韓国849万人、台湾618万人、アメリカ304万人に続き、香港は世界で5位である。コロナ禍前は、香港はアメリカを上回り4位だったが、5位と順位を落とした。

【香港人の都道府県別宿泊状況】

観光庁では国、地域毎、そして都道府県毎に、宿泊者の統計調査を月単位で行っている。2025年9月までの統計データが公表されており、香港人(香港特別行政区パスポート、BNOパスポート、いずれかの所持者)に関して都道府県別に集計を行った(図表1)。

宿泊総数では、1-9月の累計で、24年同月比17.8%減、19年同月比でも1.8%減となった。人数ベースでの24年同期が7.6%減であるので、宿泊の方が減少率を上回っていることから、訪日1回当たりの日本滞在日数が減っていることが分かる。

香港人の宿泊が最も多かったのが、東京で、コロナ禍後一貫して1位をキープしている。都道府県別シェアで見てみると、23年1-9月期が30.4%だったのに対し、24年同期は、26.3%、25年同期は25.0%と、東京一極集中の状況は改善しつつある。

2位はこれまでの大阪に替わり福岡となり、24年同期比で3.9%減、19年同期比では96.9%増と倍増した。19年は全国で5位、昨年は北海道を上回り3位、年々順位を上げ、ついに大阪を上回った形だ。

3位は大阪で、24年同期比38.1%減と、全国での17.8%減を上回る。19年同期比でも37.3%減と、19年の全国1位から後退した。関西圏では、京都も24年同期比42.2%減と大阪を上回る減少率で、5位から6位に順位を下げている。この大阪、京都のマイナスは、万博の影響で、混雑や宿泊費の高騰から、今年は訪問が避けられたと考えられる。

4位は北海道で、24年同期比0.8%減、19年同期比13.7%減と、19年の水準にはまだ届かないものの、昨年比では小幅な減少で、「地震の噂」や「景気の不透明からの旅行控え」の影響が小さかった。

5位の沖縄は、24年同期比で18.0%増と、トップ10の中では唯一プラスを記録している。「噂」の影響が小さかったこと、また、25年4月から石垣空港、同6月から下地島空港(宮古島)への直行便が再開した事も、県内での宿泊数を押し上げた要因と考えられる。

その他、トップ10の都道府県を見てみると、7位の愛知が24年同月比で6.8%減と、東京、大阪と比較すると減少幅が小さい。また、19年同期比では37.1%増とコロナ禍前を上回っている。新たにトップ10に入ったのが長野県で、24年同月比13.7%減、19年同期比では6.3%増と、こちらもコロナ禍前を上回っている。昨年9位だった熊本は、25年7月から直行便が運休したことも影響し、15位まで順位を落とした。

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図表1 訪日香港人都道府県別宿泊者数 (2025年1-9月期) 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

【香港人の地域別宿泊状況】

次に、各地方別に集計を行い、2024年7-9月期から、直近の7-9月期までの、四半期毎の推移を示したものが図表2である。

25年7-9月期は、24年同期と比較し、関東、近畿の大都市圏のシェアが大きく落ちたことが分かる。逆に沖縄のシェアが4ポイント増と、大きく増え、北海道が1.4ポイント、九州が0.7ポイント増となっている。

「地震の噂」の影響により、訪日経験が少なく、大都市圏訪問がメインの層が訪日を避けたと考えられ、結果的に地方分散が進んだ形になった。グラフ最下部の19年7-9月期との比較では、東北のシェアが伸びているのが特徴的で、東日本大震災以前は人気のエリアだったものの、震災以降避けられていたものが、仙台直行便の就航も有り、需要が戻ってきた。

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図表2 訪日香港人地域別宿泊者数 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

【「地震の噂」の影響、5-9月期での集計】

繰り返しになるが、香港からの訪日は25年5月から7か月連続で、前年同月マイナスを記録している。このマイナスとなっている5月から、公表されている9月までの宿泊について、地域別に集計を行った(図表3)。

24年比でプラスなのは、中国(27.2%増)、東北(15.4%増)、沖縄(12.6%増)の3地域で、他7地域は全てマイナスとなっている。プラスの地域に共通するのは、「直行便の就航」で、例えば広島は24年11月から、仙台が24年12月から、石垣が25年4月からと、前年同期にはまだ直行便が無かった事がプラスの要因として大きいだろう。

一方で、「噂の影響」を口実として、直行便が運休となった鹿児島(25年6月から)、熊本(25年7月から)のある九州は、25.0%減と、マイナスに影響したと考えられる。

これら、直行便の就航や運休の影響により、前年同期比での増減について、「地震の噂」の直接の影響を計ることは難しい。ただ、関東(38.2%減)、近畿(47.2%減)のマイナス幅が最も大きく、大都市圏が大きな影響を受けたことは間違いない。これは、「噂」や災害発生時には、訪日経験が少なく、日本に関する知識が相対的に低い層が訪日を避け、大都市圏への滞在日数の低下を招くことを示唆している。また逆に、北海道や沖縄といった、いわゆる観光目的での定番エリアは、影響が小さかった事も分かる。

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図表3 訪日香港人地域別宿泊者数(2025年5-9月期) 出典: 観光庁 宿泊旅行統計

【11、12月の京都市内の様子】

昨年以上の猛暑の影響から、25年の紅葉は遅く、また、紅葉の葉焼けにより、色づきが例年よりも悪かった印象だ。日中関係の影響から、団体を中心に中国からの訪日が減少している様だが、京都市内の賑わいは24年以上で、日本人の比率が増えてきている印象もある。pastedGraphic_3.png

図表4 嵐山・保津峡 (2025年11月23日 筆者撮影)

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図表5 鴨川 (2025年11月21日 筆者撮影)

【筆者紹介】

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清水 泰正(しみず やすまさ)

Japan Tourism Research & Consultancy Limited 代表取締役社長

14年間の日本政府観光局勤務を経て、インバウンド誘客に関する戦略コンサルタントとして独立。シンガポール、香港に計9年間の駐在、現在、京都市観光協会アドバイザー、広島県観光連盟アドバイザー、(社)日本フォトウェディング協会顧問。

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