【はじめに】
昨年の原稿を見返してみると、昨年の梅雨入りは全国的に遅れていたという。今年の近畿エリアの梅雨入りは、昨年よりは早かったものの、平年から3日遅れの6月9日だった。梅雨明けも早まるようで、梅雨時期は短くなる。天気予報の解説では、梅雨期間中の降水量は例年同じ傾向にあるそうで、梅雨の期間が短くなる事は良い一方で、シーズン中の1日当りの降水量は増えることを意味し、土砂崩れや河川の氾濫等、自然災害により注意しなければならない。
自然災害の関連では、「7月5日に日本で地震が起こるかもしれない噂」について、日本国内では、一部の訪日インバウンドに関わる者意外には話題にもなっていない。本稿が公開される頃には、結果が分かっているだろう。6月、7月の訪日が控えられた分、「結局何も起こらなかったではないか」と、7月5日以降の反動需要に期待している。 本号では、昨年1年間の香港人の日本国内での消費動向について、コロナ禍前の19年と前年23年との比較で見ていきたい。
【2025年4月訪日者数】
今年4月の香港からの訪日者数は263,600人、前月から約5.5万人増、24年同月比42.9%増を記録した。2,3月と2ヶ月連続でマイナスになっていたが、旧正月、イースターがそれぞれ昨年は2月、3月だったことが影響している。1-4月までの累計では、911,200人で、前年同期比12.8%と増加傾向にある。
また、4月単月での26.4万人は、今年最多はもちろん、昨年12月の28.6万人、同7月の27.9万人に次いで、単月として過去3番目の訪日者数を記録したことになる。
この4月の数字からは、「7月の地震の噂」の影響による減少は見られないが、一部識者からは、6月、7月の訪日を控えるための、駆け込み需要も一定数あったのではという指摘もある。
【2024年の訪日外国人の消費動向】
観光庁の「インバウンド消費動向調査」(23年までの名称は、訪日外国人消費動向調査)を元に、2024年通年での、国・地域別で、日本国内での消費額(1泊当たり単価)を算出した(図表1)。
まず一番左側の列に注目頂くと、1泊当りの単価では、香港がトップで、2019年を除き、香港が1位をキープしている。一般に報道されている、「日本滞在中の消費額(総消費額)」では、欧米が高い傾向にある。これは、宿泊日数が長いため、総額として高く出てくるが、各地域にとってみるとそのエリアにずっと宿泊している訳では無いため、「1泊当りの単価」が重要な指標であると筆者は考えている。そういった観点から、香港人は日本国内で1泊当り最もお金を使っている、最も重要なお客様なのである。
次に、右側に目を向けて頂くと、宿泊や飲食、買物と費目別の内訳になっている。香港は、「飲食」、「買物」でそれぞれ1位、「宿泊」では5位と、宿泊では予算をセーブし、食事や買物を重視している、という大まかな傾向にある。
図表1 国地域別1泊当たりの消費単価(2024年) 出典: 観光庁 訪日インバウンド消費動向調査
【総消費額と航空券代】
より香港人に焦点を当て、主要支出項目について、2019、23年との比較をまとめた(図表2)。
総消費額、1泊当り消費額とも、過去最多を更新、23年は、コロナ禍からの反動需要で消費も高くなったが、24年は更にそれを上回っており、香港人の日本国内での消費意欲に衰えが無いことが分かる
高止まりしていた航空券代について、23年比で15.1%減と落ち着いてきた。それでも19年と比べると43.6%増と、1.5倍程度の水準である。なお、この航空券代は、上記の「総消費額」には含まれておらず、「総消費額」は、日本国内で消費された金額となっていることに留意頂きたい。
また、航空便関係ではLCC(Low-cost Carrier)の利用比率が35.5%と、19年の水準を少し上回り、LCCが中心となっている地方空港への便の再開、新規就航が進んできた事が分かる。また、個人旅行比率も、23年から1ポイント増加の89.9%と、従来型の旅行会社を使わず、航空券やホテルをオンラインで自己手配するスタイルが更に進んでいる。
【費目別での比較】
「宿泊」「飲食」「交通」「買物」の4費目について、いずれも19年、23年を上回り。「娯楽サービス」のみ、23年との比較で4.6%減となった。ただし、19年比では64.3%増と、最も高い伸びを示しており、コロナ禍を境に「コト消費」が高まっている事が分かる。
23年比で最も高い伸びを示したのが「買物」で、31.1%増、19年比では52.0%増と1.5倍になっている。主に、服やかばん、靴、時計、フィルムカメラ、音楽・映像・ゲーム等のソフトウェアで、購入単価の増加が見られる。
図表2 香港人の消費内訳(2024年) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査
【香港人による交通機関の利用】
交通に関して、2023年10月に大幅な値上げとなったJapan Rail Passについて、19年比で3.3ポイント減、23年比で3.6ポイント減と、利用率が6.5%まで低下した。その影響から、片道や単純往復等で、新幹線やJR等を利用する流れになっており、そういったチケットの購入が73.2%と、交通機関の利用の中で最も高い。
レンタカー利用率は、19.0%と、他の国、地域と比べても最も高く、利用率としては、19年、23年から微減なものの、利用者の単価は上がっており、レンタカー利用日数の増加や、より良いグレードの車を借りていると考えられる。
図表3 香港人の交通、娯楽サービス消費(2024) 出典: 観光庁 インバウンド消費動向調査
【香港人による娯楽サービスの利用】
コト消費への移行について、さらに見ていきたい。23年に利用が高かった「テーマパーク」「温泉」のマイナス幅が大きくなったが、「テーマパーク」は、19年比で4.2ポイント増と、需要の高さは継続している。「テーマパーク」の利用者単価は、19,23年と比べても増加しており、好きなことにはよりお金をかける、「メリハリをつけた消費行動」も見られ、ターゲットを見定めていくことが重要だ。
23年比で増加しているのが、「舞台・音楽鑑賞」「美術館・博物館等」で、「美術館、博物館等」では単価の増加見られる。今年は瀬戸内国際芸術祭も行われていることから、これら芸術系への関心の高まりと、消費が刺激されることは間違いないだろう。
【大阪万博】
大阪万博が、今年10月13日まで開催されている。筆者は仕事も含めこれまで3度訪れ、また7月にも訪問予定で、是非訪問をおすすめしたい。
混雑は報道の通りで、希望通りのパビリオンを訪れるには、オンラインでの事前の抽選と当日の先着順、もしくは当日列に並ばなければならないが、、、世界最大の木造建築物である「大屋根リング」を一番のおすすめしたい(予約不要)。リングの下は、風がよく通り良い休憩場所となるとともに、上部は花畑の中を遊歩道が整備されており、幅30メートル、長さ2キロのこの構造物は、一見の価値がある。
図表4 大阪万博「大屋根リング」 (2025年月6月4日 筆者撮影)
図表5 宇治・三室戸寺のあじさい (2025年6月5日 筆者撮影)
【筆者紹介】
清水 泰正(しみず やすまさ)
Japan Tourism Research & Consultancy Limited 代表取締役社長
14年間の日本政府観光局勤務を経て、インバウンド誘客に関する戦略コンサルタントとして独立。シンガポール、香港に計9年間の駐在、現在、京都市観光協会アドバイザー、広島県観光連盟アドバイザー、(社)日本フォトウェディング協会顧問。
日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから。





