香港と中国本土の政治・経済・社会ニュースを日本語で速報します
日本と中国の今を読み解く

米中貿易戦争のゆくえ

トランプ大統領が世界に向けて仕掛けた関税戦争に対して、今のところ中国は毅然とした対応を続けています。これまでの推移を見る限り、相手をしっかりと分析した上で対策を講じているのは中国のように思えます。

したたかな交渉

今回の関税戦争では当初中国は交渉を避け、米国が中国に課した関税に相当する関税を米国に対しても課すと言う報復関税で応酬しました。中国は米国市場を失っても良いとの覚悟で挑んでいるのだなと感じました。

また中国は、米国にとって痛手となる鉱物類の輸出制限を行う事で、有利な立場での交渉を進めている印象です。

10月4日、bloomberg(ブルームバーグ)が興味深い記事を配信しました。タイトルは「China Urges Trump to Lift Security Curbs in Push for Deals(中国、合意実現に向けトランプ大統領に安全保障上の制限解除を要求)」

URL: https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-10-03/china-pushes-trump-to-drop-curbs-as-it-dangles-investment-pledge

中国は米国に対して米中双方が合意(納得)できる落としどころを模索しながら交渉を続けているようです。

記事によると、中国は米国に対して少なくとも1兆ドルを投資し、様々な工場を建設する提案をしているようです。この提案であればトランプ大統領の「製造業再生」の夢を実現し、中国にとっても中国製品の市場拡大につながることになります。

中国は更に二つの大きなメリットが見込めます。

①相互依存と友好関係を深めることで、両国間の激しい戦争を回避できる。(安全保障上の制限、制裁などの撤廃)※これは投資をする上での条件にもなるのでしょう。

②中国人民銀行が保有する約1兆ドル相当の米国債およびその他の米国債を処分できる。※米国債保有によるリスクの回避

中国は米国への投資条件として、台湾問題についても米国は一つの中国という立場を守り、武器の売却など含め干渉しない事などを交渉では盛り込むでしょう。

注)本情報に関して中国側は一切報じていませんので、真偽のほどは現時点に於いて不確定な情報です。一部海外の中国分析専門家などは、ルールを突然変える米国に対して中国が投資するのはあり得ない話ではないかとBloomberg(ブルームバーグ)の報道を疑っている方もいます。いずれにせよ、今後の推移を見守りながら状況を判断し、日本もその結果に対応する必要があるでしょう。

韓国の変化

韓国では尹錫悦前前大統領の逮捕、直近では旧統一教会の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の逮捕もあり内政の混乱が続いています。親米の尹錫悦前前大統領や旧統一教会を支持する勢力も関係していると思われますが、最近では過激な反中デモが注目されています。反中デモでは韓国国旗と共に米国国旗も掲げられており、活動家の背景を伺い知ることができるでしょう。

この反中デモに対して李在明大統領は対策を指示しました。「「チャイナアウト」韓国で続く保守派デモ 李在明大統領は対策を指示」

URL:https://digital.asahi.com/articles/ASTB33T02TB3UHBI029M.html

記事では、「李在明大統領は2日の首席補佐官会議で、保守系団体などが行っている反中デモを念頭に「国益と国家イメージを損なうような百害無益な行為を完全に追放しなければならない」と述べ、関係官庁に対策を講じるよう指示した。」と書かれており、今後は反中デモなど排外主義的な活動を規制する方向に進むと思います。

すでに進歩(革新)系与党「共に民主党」がヘイト・扇動集会を禁止するという内容の法案を発議したようですので、近いうちに動きがあるでしょう。

日本も少し行き過ぎと思われるヘイト・躍動集会が行われており、何らかの規制が必要な状況にあると思います。言論の自由との兼ね合いで、なかなか難しい面もあるのでしょうが、分断を生むような活動を野放しにしていると大きな問題へと発展する事が懸念されますので、与野党含めて真剣に議論して欲しいと願います。

日本のゆくえ

自民党の新総裁には高市早苗氏が選出され、近隣国との外交は先行きが見えない状況になりました。

極右と言われる高市氏の過去の発言から、中国、韓国との関係に於いては少し悲観的な展望が予想されています。高市新総裁誕生後には円安も加速し、輸出企業にとっては歓迎されるのかもしれませんが、インフレは加速しますので国内経済には大きな重荷になるでしょう。

自民党も単独では政権を握ることができない今の状況では、他党との連立政権を組むしか道はなく、高市氏の過去の発言の多くは封印される事も予想されます。

上述しましたが、中国も米国との交渉を続けており、武力による紛争ではなく、双方が交渉により紛争を終結させる方向に進んでいるようです。また韓国も中国との関係見直しの方向で進んでいますので、米国、韓国共に中国とは融和政策に転じる可能性も高い。

米国、韓国に限らず、オーストラリアも対中政策の見直しが進んでおり、米国をリーダーとした対中包囲網も崩れかけてきています。このような時こそ一方に偏らず、バランスを保ち、日本にとって何が有益なのかをしっかりと見極め、進む道を誤らないようにして欲しいと思います。

日中関係の未来

反中国スタンスの高市氏が自民党総裁になりましたが、中国はしばらく様子見の状況でしょう。現時点では一政党のトップの存在であり、10月15日に予定されている臨時国会で首相が確定するまでは外交的に大きな動きは見せないと思います。

高市氏を支援していたグループなどは反中の機運が高まる事を望んでいる節がありますが、おそらくそちらの方向に加速することはないと思います。中国とのビジネスに重きを置く経済界や訪日インバウンド関連で事業を行っている人たちなど、中国との関係悪化を望まない企業や団体が抑止となり、高市氏が首相に就任してもバランスを取らなくてはならない立場に置かれることになるでしょう。

今年の国慶節でも中国の海外旅行先のトップは日本です。訪日人数も過去最高を更新しました。日本の「マナー」を知らない訪日外国人に対しての厳しい意見もありますが、受け入れ側として準備すべき事も多々あるでしょう。日本へ来てくれて宿泊し、食事し、買い物をしてくれる方々なのですから、暖かく受け入れできる体制作りも全国的に官民が一体となり真剣に取り組む時期に来ている思います。

【筆者紹介】

pastedGraphic_2.png

清水 泰雅(しみず やすまさ)

STECO GLOBAL LIMITED (香港)CEO、上海清環環保科技有限公司(STECO)董事長、安立飛商務信息諮詢(上海)有限公司 董事長

1961年愛知県名古屋市生まれ。90年より愛知県で空調ダクト洗浄の専業サービス業を創業。2005年、中国上海市に独資にて法人を設立後、今日まで中国ビジネスに携わっている。JETRO、自治体、証券会社などをはじめ彼らが主催する中国関連セミナーでの講演多数。2015年以降は、大手コンサルティング企業とも連携し、数多くの中国ビジネス案件に注力している。

今なら無料 日刊香港ポストの購読はこちらから
香港メールニュースのご登録

日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから