1.はじめに
香港の立法会は5月28日、審議中であったグローバル・ミニマム課税(Global Anti-Base Erosion Model Rules 、「GloBEルール」) 及び香港ミニマムトップアップ課税(Hong Kong Minimum Top-up Tax、以下「HKMTT」) に関する法案を可決し、香港において当該重大な税制改正が正式に施行されることが確定しました。これは香港の税制を国際基準に合わせるための重要な一歩であり、当該税制の施行により年間連結総収入金額が7億 5,000 万ユーロ以上の多国籍企業グループ( Multinational Enterprise 、以下「MNE」) を対象に、事業を行う各管轄地域において最低でも15%の実効税率 (Effective Tax Rate、「ETR」) が課されることになります。所得合算ルール(Income Inclusion Rule 、「IIR」) 及びHKMTTは、2025年1月1日以降に開始する会計年度まで遡及適用されます。軽課税所得ルール (Undertaxed Profits Rule 、「UTPR」)の施行時期は後日に決定される予定です。
ここでは、GloBEルール及びHKMTTに関する香港税制のポイントと、対象の大手多国籍グループに適用される重要なコンプライアンス規制の概要をご紹介します。
2.GloBEルールとHKMTTの適用
- GloBEルールとHKMTTは、各対象会計年度の直前の4会計年度のうち2以上の会計年度の年間連結総収入金額が7億 5,000 万ユーロ以上の多国籍企業グループ(以下「対象多国籍グループ」)に適用される。
- 対象多国籍企業グループは、 OECDの定めたGloBEルールに従って、事業を行う各管轄地域のETRを計算する。
- 対象多国籍企業グループの香港におけるETRが15%未満の場合、投資企業および保険投資企業を除き、香港の構成会社等はHKMTTの適用対象になる。
- 香港に所在する対象多国籍企業グループの親会社は、香港のIIRの適用対象となる。対象多国籍企業グループの海外の管轄区域におけるETRが15%未満の場合、低税率の海外構成会社等に対するトップアップ課税は香港の親会社を通して徴収される。
- 対象多国籍企業グループの各香港の構成会社等又は代表して申告納税をする構成会社等は、会計年度終了後6ヶ月以内に香港の税務局に書面により届出書を提出し、会計年度終了後15ヶ月( 移行期間は18ヶ月に延長)以内に同じく香港の税務局にトップアップ税申告書を提出することにより、トップアップ課税額を確定しなければならない。
- 対象多国籍企業グループは、香港の構成会社等が複数ある場合には、一つ又は複数の構成会社等を指定して、香港トップアップ課税に係る届出書及び申告書を提出し、トップアップ課税額を納付することができる。納税を指定された構成会社等が滞納する場合、すべての関係事業体は、納付すべきトップアップ課税額について連帯責任を負う(joint and several liability)。
3.主な税務コンプライアンスの期限
12月/3月決算の対象多国企業グループに属する香港構成会社等の主な税務コンプライアンス期限は以下の通りである:
| 提出資料/決算期 | 2025年12月決算の場合 | 2026年3月決算の場合 |
| 届出書の提出 | 2026年6月30日 | 2026年9月30日 |
| トップアップ課税申告書の提出
(日本親会社と決算期は同じと仮定。決算期は異なる、もしくは判断が難しい場合にはお問い合わせください。) |
2027年6月30日
(日本親会社も12月決算であり、申告初年度と仮定。) |
2027年6月30日
(日本親会社も3月決算であり、日本親会社では2025年3月期にIIRが適用されているため、香港の申告は2年目にあたると仮定) |
4.おわりに
GloBEルールおよびHKMTTの導入により、対象多国籍企業グループの税務コンプライアンスへの負担は大幅に増加することが考えられます。 また、実効税率を計算し申告するための体制が必要となります。
当該新しい税制は、事業拠点や企業構造等のビジネス上の意思決定に影響を与える可能性があります。そのため、多国籍企業グループは、グローバルの税務戦略考慮し、税務ポジションを最適化することが求められます。
コンプライアンス期限を考えると、対象多国籍企業は早急に準備を開始することが必要です。これには、当該税制導入に伴う影響額の試算や、申告要件に対応するための社内規制とシステムの整備、当該税制に関する従業員の研修、そしてこれらの複雑なルールに効果的に対処するための専門的な税務アドバイスの取得等が含まれます。。
筆者紹介
フローラ 曾(Flora Zeng)
デロイト トウシュ トーマツ香港事務所
日系企業サービスグループ 税務ディレクター
中国本土・香港における税務と移転価格専門サービスで15年超の経験を有する。多数の日系企業に対し中国への投資・再編・クロースボーダー業務と移転価格文書化の作成、移転価格調査抗弁、移転価格ポリシーの構築、移転価格調査による二重課税問題の解消等に関する助言を行い、複数社日中APAを成功させた実績がある。
連絡先: flozeng@deloitte.com.hk
※ 本記事には私見が含まれており、筆者が勤務する会計事務所とは無関係です。
日刊香港ポストは月曜から金曜まで配信しています。ウェブ版に掲載されないニュースも掲載しています。時差ゼロで香港や中国各地の現地ニュースをくまなくチェックできます。購読は無料です。登録はこちらから。





