香港は7月1日に中国への返還から28周年を迎えたが、その前日の6月30日は「香港版国家安全法」の施行から5周年に当たる。6月21日には「香港版国家安全法」公布・施行5周年フォーラムが開催され、中国共産党中央香港マカオ事務弁公室および国務院香港マカオ事務弁公室の夏宝龍・主任が来港して5日間の視察・調査を行った。2019年に発生した逃亡犯条例の改正反対デモによる暴動を機に香港版国家安全法が施行され、5年を経て社会秩序は回復したが、中央政府と特区政府は依然として警戒を緩めない姿勢を示している。(編集部・江藤和輝)
■返還28周年、経済発展と民生向上
香港返還28周年を迎えた7月1日、特区政府は香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターで祝賀パーティーを開催した。李家超・行政長官はスピーチで「(就任からの)過去3年間、政府は安全で安定した香港を築くための改革を推進し、経済発展と民生の向上において着実に成果を上げてきた」と述べた。また、行政文化を変革し「成果重視」の政府を確立し、香港基本法第23条の立法化という憲法上の責任を果たし、歴代政権が成し遂げられなかった成果を成し遂げたことを強調した。
前日の6月30日、特区政府の報道官は「この5年間、香港版国家安全法は香港の混乱を秩序へと導く大きな転換点となり、国家の主権、安全、発展の利益を守るための確固たる法的基盤を築き、一国二制度の実現に向けた重要な節目となる重要な日である」との声明を発表した。今年の返還記念日前後で際立っていたのは返還28周年よりも香港版国家安全法の施行5周年といえる。
報道官は「国家の安全は国家の存立と発展にとって最重要課題であり、根本的な前提である。香港は中国への返還後、長きにわたり国家の安全保障において『無防備』な状態にあった。反中乱港勢力(反中勢力・香港を撹乱する勢力)や外部の敵対勢力は『一国二制度』の原則に絶えず挑戦し、香港の統治権を奪取しようとしてきた。2012年の『反国民教育』、2014年の『セントラル占拠行動』、2016年の旺角暴動、そして2019年6月から10カ月余り続いた逃亡犯条例の改正反対デモによる『暴動』と『香港版カラー革命』に至るまで、香港に未曾有の危機をもたらし、香港の社会、経済、ビジネス環境に深刻な損害を与え、大多数の市民をパニックに陥らせてきた」と述べた。
香港の危機的状況において、中央政府は断固たる措置を講じたと指摘。全国人民代表大会(全人代)は2020年5月28日に関連決定を可決し、全人代常務委員会は2020年6月30日に香港版国家安全法を制定し、香港基本法付属文書3に盛り込み、香港特区で公布した。これは香港特区における国家安全保障のための法制度と執行メカニズムの欠陥を埋め、安定機能としての役割を果たし、暴力と混乱を鎮圧し、その効果は即座に現れた。これは香港の「混沌から秩序への転換」と「香港に平和をもたらす一つの法」の転換点となった。
その後、特区政府、立法会、そして社会各層の努力により、香港特区は憲法上の責任を果たし、昨年、香港基本法第23条の現地立法を無事に完了し、香港特区は「国家安全条例」を制定し、2024年3月23日に官報で公布、施行した。「これにより香港特区における国家安全保障のための法制度と執行メカニズムが改善され、香港版国家安全法と整合性・補完性を持ち、一体化することで、香港の国家安全保障のための強固な壁が築かれた」と強調した。
報道官はさらに「5年間の実践は、香港版国家安全法が『一国二制度』を守り、香港の繁栄と安定を維持する『守護者』であることを証明した。これは歴史的にも実務的にも大きな意義を持つ良法である。香港版国家安全法をはじめとする香港特区の国家安全保障のための法律は、法治を堅持し、法に基づいて権利と自由を保護している。今日、香港のビジネス環境は改善を続けている。香港は世界で最も自由な経済圏の中で第1位、国際金融センターとして世界第3位、そして世界競争力ランキングでもトップ3に返り咲いた。香港は『安定から繁栄へ』の道を全速力で前進していると言える」と述べた。
■国家安全上の脅威は終わってない
陳国基・政務長官は6月30日に「香港版国家安全法」公布・施行5周年を迎えたのに当たってメディアのインタビューを受けた。同日付『星島日報』によると、陳長官は「2019年の社会動乱の主因の一つは、過去の愛国主義教育の不足であり、専門職の若者を含めて扇動され誤った方向に導かれるなど、多くの悲惨な事態を招いた」と指摘。陳長官は、政府は市民に対し国家を正しく理解し、自覚的に国家の安全を守るよう、あらゆる側面から教育する必要があると述べた。
陳長官は、香港の返還から28年を経て「一国二制度」は全体としては成功を収めているものの、2014年のセントラル占拠行動、旺角暴動、そして19年の暴動といった問題のように、中間層には欠陥があり、これらはすべて国家安全保障の不十分さを反映しているとみている。逃亡犯条例の改正反対の嵐の中で「一国二制度」の本来の趣旨が歪められ、香港独立が横行し、外国勢力が香港に介入し、一部の人々が扇動され、国家と香港に対する誤った認識を抱き、破壊行為に及んだことを想起した。罪のない市民が攻撃され、殺害された例もある。陳長官は、安全な社会環境がなければ経済発展や民生の向上は空論に過ぎないとの考えを示した。
陳長官は、中央政府が香港版国家安全法を制定するという決断を下したことに感謝の意を表明。同法は即時発効し、政府に依拠できる法律を提供した。同法は国家安全保障に反する行動を企てる者に対する抑止力を持つ。その後、香港は選挙制度の改善と香港基本法第23条に基づく立法を完了した。社会の各レベルにおいて、政府はソーシャルワーカー登録条例と労働組合条例も改正した。しかし国家安全保障上の脅威は終わっておらず、外国勢力は香港に睨みをきかせており、その勢いは止まらないため、香港はより慎重にならなければならないと指摘。中でも「ソフトな対抗」リスクは依然として存在するため、最も根本的な仕事は、愛国主義教育を通じて市民一人ひとりの「免疫力」を高め、市民に理解と認識を促し、心から国を愛することだと述べた。
愛国主義教育について、陳長官は2019年の事件で最も痛ましい出来事を振り返った。多くの若者は優れた経歴を持ち、社会に貢献できたはずの専門職に就いていたが、一部の「有害メディア」に惑わされ、暴動に参加し、香港に対する外国の制裁を要求し、自らの未来を破壊した。警官を攻撃したり、市民を殴打したりする暴力行為に及ぶ者もいた。陳長官は、これは国家安全保障活動が包括的に行われない場合、破壊力がいかに広範囲に及ぶかを間接的に反映しているとも述べた。
■香港マカオ事務弁公室の夏宝龍・主任が来港
中共中央香港マカオ事務弁公室および国務院香港マカオ事務弁公室の夏宝龍・主任が6月18日、香港に到着し、5日間の視察・調査を開始した。夏主任は18日夜、特区政府本庁舎を訪れ、李家超・行政長官および特区政府の高官らと会談・協議し「李長官が香港特区統治チームを率いて習近平・国家主席の重要な指示を貫徹し、責任を負い、前進し、国家の主権、安全、発展の利益を断固として守り、愛国者による香港統治の原則を堅持し、経済、発展、民生を重視し、各方面で積極的に前進している」と称賛した。
全国香港マカオ研究会の劉兆佳・顧問は、中央香港マカオ事務弁公室の設立当時、同弁公室は調査研究を強化すると明確に表明していたと指摘。夏主任の香港訪問は、この調査研究強化の方針を実行するためのものだという。劉氏は、夏主任が今回の訪問で香港の統治と発展、そして特区政府の活動について把握することが狙いとみている。それには横琴、前海、南沙、河套、北部都会区といったプラットフォームをいかに活用して国家の発展への融合を加速させるか、香港がいかに国際金融・海運・貿易センター、国際的な人材集積地を構築できるかなどが含まれていると指摘した。
「香港版国家安全法」施行5周年フォーラムが6月21日、香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターで開催され、約2000人が参加した。夏主任は講演で「過去5年間の実践は『香港版国家安全法』が『一国二制度』を守り、香港の繁栄と安定を維持する『守護者』であることを証明している。これは歴史的にも実務的にも大きな意義を持つ優れた法律だ」と述べた。また中央政府は香港が長期的に独自の地位を維持することを全面的に支持しており、香港に有利な政策が続々と導入されると指摘した。香港は中央政府の支援政策を最大限に活用し、「一帯一路」構想の共同建設や粤港澳大湾区建設といった国家戦略と積極的に連携し、北部都会区の建設を加速させ、国家全体の発展へのより円滑な融合を図るべきと言及した。
夏主任は中央政府が「香港版国家安全法」を制定した当初の意図は、国家の安全を守り「一国二制度」を守ることであり、これは香港と大多数の香港住民にとって有益であると述べた。「香港版国家安全法」の制定と施行は、香港が混沌から秩序回復へと移行する「分水嶺」となった。香港が国家安全に「無防備」だった歴史は永遠に消え去り、「香港の安全を守る一つの法」は、一連の全体的、変革的、そして根本的な影響をもたらしたと述べた。
夏主任は逃亡犯条例の改正騒動を振り返り、「当時、一般市民は街頭に出る勇気さえなかった。それでは自由はどこへ行ったのか? 公共の場で普通話を話すと殴られるかもしれない。それでは人権はどこへ行ったのか?」と指摘。「香港版国家安全法施行から5年、香港社会は不安に別れを告げ、安定と平和を取り戻した。香港特別行政区は歴史的な香港基本法第23条の立法化を完了し、国家安全保障を守るための法制度は継続的に改善されてきた。また香港のビジネス環境はますます良くなり、各国の投資家が集まっている。国家安全法は国家の主権、安全、発展の利益を守る良い法律であり、香港の長期的な繁栄と安定を維持するための良い法律であり、香港市民の福祉と外国投資家の利益を守るための良い法律である」と強調した。
■黄之鋒氏、政権転覆事件で初公判
逃亡犯条例の改正反対デモによる暴動をきっかけに施行された香港版国家安全法によって、返還後もはびこっていた外国勢力による干渉や、その影響によるテロ活動は過去5年の間に次々と封じ込められてきた。
香港衆志の元秘書長で民主派予備選挙「35+」政権転覆事件で服役中の黄之鋒氏は、2020年7月から11月にかけて羅冠聡氏らと共謀して外国勢力と共謀した疑いで香港警察国家安全処によって起訴され、6月6日に西九龍裁判法院で初公判が行われた。被告人は当面、答弁の必要はない。国家安全処指定判事の蘇恵徳・首席判事は検察の要請を受け、警察による更なる捜査を待って8月8日まで審理を延期した。被告人は保釈を申請していない。
28歳の黄被告は、外国または域外の勢力と共謀して国家の安全を脅かした罪で起訴された。起訴内容は、2020年7月1日から11月23日の間に香港において、羅氏らと共謀し、外国または域外の機関、組織、または個人に対し、(i)香港特別行政区または中華人民共和国に対する制裁、封鎖、その他の敵対行為、および(ii)香港特別行政区政府または中央人民政府による重大な結果をもたらす可能性のある法律および政策の策定および実施を著しく妨害するよう要請したとされている。
逃亡犯条例の改正反対デモで警官の指を噛みちぎり、禁固5年半の判決を受けた杜啓華氏は釈放後、英国留学を申請したが却下された。2019年7月14日、香港大学卒業生の杜氏は沙田新城広場での衝突で警察巡査部長の薬指を噛みちぎった。4年前、彼は公共秩序の撹乱、警察官への暴行、他人への深刻な傷害、故意の傷害の4つの罪で有罪判決を受け、禁固5年半の判決を受けた。杜氏は昨年10月に保護観察下で釈放され、その後、英国バーミンガム大学法学部への入学を認められた。だが懲教署監督事例審査委員会は彼が英国で再び過激派分子になることや、BNO保持者である彼は英国への居住と帰化を申請し、懲教署の監視を逃れると懸念。今年4月1日、杜氏は英国への留学を申請したが却下され、控訴も却下されたため、6月25日に高等法院(高等裁判所)に司法審査を申し立て、英国への留学を却下した2度の決定を取り消すよう求めた。
杜氏が英国に留学した場合、彼の精神科治療が中断され、懲教署の監督官による彼の精神疾患の監視は困難となる。BNOビザ保有者である杜氏は英国に5年間居住した後、永住権を申請することができ、さらに1年間居住した後、英国市民権を申請することで懲教署の監督を逃れることができる。杜氏が監督命令に違反した場合、英国当局は彼を香港に送還することに協力せず、監督官による再監督や収監は困難になると懲教署は考えている。
懲教署監督事例審査委員会は、杜氏が提案した追加条件では上記の問題を十分に解決し、関連するリスクを管理することはできず、香港を離れて英国で法学士の学位を取得することは、彼の唯一の選択肢ではなく、更生と社会復帰の唯一の方法でもないと指摘。委員会は、杜氏が香港で学ぶことは可能であると考えている。杜氏の英国留学が許可され、懲教署の監督が中断された場合、彼は再び過激派分子となり、違法行為や暴力行為を犯し、国家の安全保障上の利益が損なわれることになるとみている。
■依然くすぶるテロ活動の芽
香港警察国家安全処は6月2日、電話やメールを使って「香港独立」「台湾独立」「香港版国家安全法の廃止」など扇動的な意図を持つメッセージを拡散し、中央の在港機関に爆弾を仕掛けたと脅迫した疑いで男女5人を逮捕した。逮捕された男性は音声変換ソフトを使って音声通報を行い、5月13日に啓徳体育園で開催された台湾のバンド「五月天(メイデイ)」のコンサート中に爆弾を爆発させると伝えていた。警察は同日、担当者を派遣して確認したところ、虚偽の通報であったことが確認された。5人は「テロ活動共謀」の疑いで逮捕され、犯行の動機や政治的見解などについて捜査を進めている。
警察国家安全処の李桂華・警視正は、この事件は4月29日から5月20日にかけて発生した一連の事件に関係していると述べた。何者かがメールやソーシャルメディアを通じて警察にメッセージを送りつけ、「台湾独立」を広め、「香港版国家安全法の廃止」を主張した。ある事件では、香港の中央系機関に隠された爆弾を爆発させると脅迫していた。5月13日、ある男が携帯電話の音声変換ソフトを使って音声トラックを作成し、ホンハム地区の999通報センターに電話をかけた。その音声トラックには、同日に啓徳体育園で開催されるコンサート会場に爆弾を仕掛けて爆発させたと記載されており、「香港独立」と「台湾独立」を宣伝する内容も含まれていた。その後、男は近くのビーチに携帯電話を放置した。警察は啓徳体育園に警察官を派遣して確認を行い、虚偽の通報であることを確認した。
6月26日に在香港米国総領事館で行われたレセプションでグレゴリー・メイ総領事は、外国勢力との共謀容疑で起訴された黎智英(ジミー・ライ)氏の釈放を求めるような発言をし、特区政府は国家安全法に対する中傷として強く譴責した。陳国基・政務長官が「国家安全保障上の脅威は終わっていない」と指摘したのはこういうことである。
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