前号に続き、中国の新疆ウイグル自治区に関して少し詳しく説明したいと思います。日本のメディア(ソーシャルメディア)などでは相変わらずネガティブな話題の多い地域ですが、これは日本を含む西側諸国に限った傾向です。
分断されている報道
私は毎朝1~2時間をかけて世界中のニュースに目を通すのが日課になっています。ずっと感じている事ですが、G7を始めとする所謂西側諸国(日本を含む)の報道とグローバルサウスと言われる非西側諸国の報道では、同じ話題がまったく反対(逆)に報じられていたり、意図的に報じない話題があったりと報道が随分と乖離しています。(意図的に報じないのは、どちらにも言えることですが。)
新疆ウイグル自治区に関する話題も西側メディアではネガティブな話題が多いのですが、非西側諸国のメディアでは逆にポジティブな話題が多いという現象が起きています。
どうしてこのような現象になるのか?どちらの報道が正しいのか?これについて少し説明をしたいと思います。新疆ウイグル自治区やチベット、香港に関して、中国政府が弾圧していると描写しているのが西側メディアなのですが、最近ではどうしてそのような状況になっているのか、その背景が明らかになってきています。
他国に対する政権転覆機関として明らかになっているNED(全米民主主義基金)という組織が米国にありますが、そのNEDが資金提供して活動しているのが世界ウイグル会議(日本ウイグル協会は世界ウイグル会議の傘下組織)です。彼らの目的は「中国を不安定化する」ことにあり、「事実に基づいて」非難すると言うようなスタンスではありません。中国に対して「騒ぎ立てる役割」を担っており、西側メディアやシンクタンクは彼らの主張を「拡散する役割」となっています。
ジェノサイドだとか強制労働とか、臓器摘出だとか色々と騒がれていますが、どれも確固たるエビデンスは存在せず噂話の域を出ていません。米国は2022年に「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」などという国内法まで制定しましたが、この法律でも強制労働が行われているとは断定されておらず、あくまでも強制労働の疑いが有るので規制するという法律です。常識的には考えられない法律で、「強制労働で作られたものではない事を輸入者が証明しろ」という悪魔の証明を求めている法律です。中国に対する嫌がらせとしか思えない法律ですが、このような法律が制定されてしまうのも米国なのでしょう。
日本企業にとって有望な市場
私は2020年より新疆ウイグル自治区へ何度も訪問し、2021年にはウイグル族をパートナーとして現地に合弁会社を設立しました。なぜ合弁会社を設立したかと言うと、純粋にビジネスチャンスが多く、将来の成長性が高いと感じたからです。また、進出している日本企業も少なく、先行者利益が見込めると思ったからです。半年間ほどかけて入念にリサーチした後に法人設立を決断しました。
設立当初は中国へ進出している日系企業に対して、現地での販路拡大を提案して現地でのサポートをする業務から始めましたが、多くの企業が新疆ウイグル自治区への販路拡大には後ろ向きで苦戦しました。多くの企業からは、「人権問題」のあるところですよねと言われました。そのようなイメージが定着しており、日系企業(日本人)が報道の影響を大きく受けているのだと実感しました。良くない事例ではありますが、米国によるプロパガンダの成功例の一つでしょう。
現地は日本製品を望んでいるのに、望まれている市場へは進出しないという摩訶不思議な現象が起きています。その影響は徐々に薄れてきましたが、今現在に於いても続いています。
コロナ規制の最中に訪れたカシュガル空港
コロナの影響で事業はストップ
2022年初頭には中国各地で都市封鎖(ロックダウン)が行われ、事業を一時ストップするしか無い状況でした。合弁会社としては最悪のタイミングでのロックダウンで、その直前に日系製品を大量に仕入れて現地で販売を始めるところでした。物を販売するにも販売先の店舗は強制的に閉鎖され物流もストップ、仕入れた商品は倉庫に眠ったままとなりました。賞味期限のある商品も多く含まれていたので、結果として廃棄することになってしまいました。とても痛い経験でした。
ただ、この期間は冷静に事業を再考する期間ともなりました。この時に考えた将来ビジョンに基き事業を再構築して現在に至っています。今は複数の事業を分散して同時進行で進めています。また、物の販売だけでなくサービスの販売も行っています。
どのような事業を行っているのか
日本の医師によるオンライン診療(イメージ)
現在、新疆ウイグル自治区にある合弁会社では主に次の事業を行っています。
- 日本国内で製造された製品を現地企業へ販売。(B to B)※OEM受託も含まれる。現地企業名の製品を日本国内のメーカーで生産して輸出。
- 日本製品を現地へ販売。一般貿易、越境ECどちらも行っています。(B to C)
- 訪日医療サービス。日本の医療法人と提携し、オンライン診療、訪日健診・治療のサポート。(B to C)
- 留学エージェント業務。日本国内の日本語学校と提携して、日本への留学生斡旋を行っています。(B to C)
現状どれも日本にとっては外貨獲得となる事業なのですが、将来的には新疆ウイグル自治区の製品を日本へ輸入するなどして双方向ビジネスへと向かうつもりです。
上記①の事業については想像以上にニーズがあり、今は常に案件を抱えている状態です。日本でOEM生産を望んでいる製品は化粧品、健康食品、サプリなどが多いです。
②については最近始めたばかりで検証がまだできていませんが、最も成長を期待する分野です。
③で行っているオンライン診療のニーズが高く、現状では毎週一人以上のペースで受託して実施しています。日本の医師によるオンライン診療は予想以上にニーズがありました。
オンライン診療後は訪日して検査、治療を望む方がほとんどで、オンライン診療を入り口として訪日治療へとつなげる流れとなっています。相談者はほとんど口コミで広がっています。
チャンスを感じる市場
ウルムチ天山空港の新しいターミナル
実際に事業を行ってみて、新疆ウイグル自治区は非常にポテンシャルの高い市場だと言うのが予測から確信に変わりました。報道などの影響により日本企業の多くがそのチャンスを逃してしまっているのは残念な状況だと感じています。
最近では日本のユーチューバーなども現地を訪問した動画を流していますが、彼らも報道と現実にはギャップがあると話しています。「百聞は一見に如かず」と言いますが、ビザなしで特に制限もなく新疆ウイグル自治区へは行く事ができます。ぜひ、事業を行っている方は市場調査も兼ねて一度現地を訪問することをお勧めします。
次号では新疆ウイグル自治区と中央アジアの関係について詳しく説明したいと思います。新疆ウイグル自治区で売れている商品は宣伝せずとも中央アジアでも売れる実態などについて。
【筆者紹介】
清水 泰雅(しみず やすまさ)
STECO GLOBAL LIMITED (香港)CEO、上海清環環保科技有限公司(STECO)董事長、安立飛商務信息諮詢(上海)有限公司 董事長
1961年愛知県名古屋市生まれ。90年より愛知県で空調ダクト洗浄の専業サービス業を創業。2005年、中国上海市に独資にて法人を設立後、今日まで中国ビジネスに携わっている。JETRO、自治体、証券会社などをはじめ彼らが主催する中国関連セミナーでの講演多数。2015年以降は、大手コンサルティング企業とも連携し、数多くの中国ビジネス案件に注力している。
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