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日本と中国の今を読み解く

自身から身を守るため

2月28日にイスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まりました。2月28日、3月1日の二日間でイラン海軍の艦艇や潜水艦、ミサイル基地、イラン革命防衛隊の司令部など1000カ所以上を標的に攻撃し数日間で終結すると当初米側は発表していました。(文:清水 泰雅)

独りよがりの日本

昨年11月7日の「高市発言」により、中国は1月6日からレアアースの輸出規制を実施しました。その後、中国側は何度も発言の撤回を求めてきましたが、日本政府側は発言撤回には応じず、「政府の従来の見解に沿ったもの」との説明を続けています。

米国情報機関は3月18日に「2026年次脅威評価」を発表しましたが、このレポートでは「高市発言」についても書かれています。

pastedGraphic_1.png2026年次脅威評価

 

以下のように高市氏の発言についても書かれています。

Her comments represent a significant shift for a sitting Japanese prime minister.

pastedGraphic_2.png3月18日、米国情報機関発表のレポート

 

「彼女(高市氏)の発言は、現職の日本首相としては大きな転換点となる」と書かれているのです。※ここで言う高市氏の発言とは、昨年11月7日に台湾有事の際には「存立危機事態になるかもしれない」との発言。

メディアもこのレポートの記載に注目して、翌19日には以下のような報道もされました。

pastedGraphic_3.png3月19日ロイター記事

 

同盟国の米国ですら高市氏の発言は「重大な転換」と認識しているのです。日本政府が発言の撤回はせず「政府の従来の見解に沿ったもの」と繰り返し述べても、それは独りよがりの発言であり、世界はそのようには思っていないのでしょう。

現実は緊迫している

日本国内のメディアもレアアース輸出規制に伴う影響について目立った報道もなく推移しましたが、衆議院選挙に合わせて突如として「南鳥島」のレアアースに注目が集まり、あたかも問題は解決したかのような雰囲気に日本中が包まれました。

選挙戦中に高市氏は「(南鳥島のレアアースがあるので)日本はこれからレアアースに困らない」とも発言しましたが、これは完全にミスリードでしょう。

3月18日、bloombergが「中国レアアース規制が日本の中小企業を圧迫、賃金交渉に影響-JAM会長」との記事を配信しました。

pastedGraphic_4.png3月18日bloomberg記事

 

記事によると、ものづくり産業労働組合(JAM)の安河内会長は「レアアースの関係で、中小企業が苦労している。中国から、必ずしも規制されてないレアアースであったとしても、入りにくいような状況が出てきている」と説明されています。また、「企業が向き合わされている調達の問題は、主に高市首相の台湾に関する発言以降に生じたものだと」と書かれています。レアアース調達の影響は、高市氏の発言が起因していると認識されているです。

上述しましたが、日本国内メディアはレアアース規制による影響についてあまり報じてきませんでしたが、海外メディアにより報道されました。残念ながら日本国内メディアは政府に忖度してなのか、政府に不都合な話題に特に最近は触れない印象があります。

「南鳥島」に限らず、採掘は世界中の多くの地域で可能です。重要となるのはレアアースの「精錬・分離」なのです。精錬・分離に関する特許の多くは中国が独占しており、仮に南鳥島で採掘ができたとしても精錬は中国に頼らざるを得ない状況なのです。

中国はレアアースの精錬・分離工程で90%以上のシェアを持っており、米国ですら精錬・分離工程を中国に依存しているのが実情です。

そのような現状を見ると、選挙戦中に高市氏が「日本はこれからレアアースに困らない」と発言したことは、製造業などでレアアースに関係する人を除き、多くの国民を欺く発言だったのでしょう。

3月20日の日経新聞にて、「中国、「レアアース鋼」で狙う強靱な覇権川下の製品加工まで特許寡占」との記事(有料記事)が配信されました

pastedGraphic_5.png3月20日日経新聞記事

 

どうもいつもの様相ですが、海外メディアが報じるのを待って、日本国内メディアもレアアースの影響についての記事を配信し始めた感じです。今後は関連報道が増えると思います。

日経新聞の記事には次のように書かれています。「日本が脱レアアースや調達に追われている間に、中国は川上の鉱山開発だけでなく川下のハイテク向けの技術開発で先回りする。戦略は特許に透けて見える」※川下では22年以降、毎年新規公開される特許の75%以上が中国勢。記事の最後は、「日本はレアアースの生産・調達に集中しすぎると、中国の用途拡大や知財包囲網のワナにはまる恐れがある。「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」。中国情勢のつぶさな分析は、日本がレアアース大国になるために欠かせない条件だ。」と書かれています。

日本が自国の資源調達に目を向けている最中、中国はすでにその先(川下)を固めにいっています。国産比率を高めることは必要だとは思いますが現実にはハードルがあまりにも高く、そのハードルを超えれるとしても、その期間は中国に依存するしか無いのが実情です。

従って、日本が目の前のレアアース危機を乗り切るには高市氏の発言撤回しか道は無いのです。

米国・イスラエルVSイランの戦争

2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃したことにより、現在はホルムズ海峡が(イランが敵国とする国に対して)封鎖されています。日本はレアアースの問題が解決されていない状況下で更なるダメージを受ける状況となりました。

今現在(3月20日現在)、日本政府はイランのみを非難して米国とイスラエルは非難していません。※世界的にも稀な状況となっています。

3月19日、高市首相は訪米しました。

pastedGraphic_6.png訪米した高市首相

 

この写真(動画)が世界中に配信されました。3月20日のXを見ると、多くのポストが「恥ずかしい」と呟いています。

また、3月20日にホワイトハウスは以下のポストをしています。

pastedGraphic_7.png3月20日、ホワイトハウスのXポスト

 

高市首相:「世界に平和をもたらすことができるのはあなた、トランプだけだと固く信じています」。これが世界中に拡散されたのです。

おそらく、これほど世界の常識と乖離した発言はないでしょう。「日本人」の多くは喪失感や絶望を感じたのではないでしょうか。日本の首相が、日本へ向かう船はホルムズ海峡の封鎖が続きますと宣言したような発言です。日本はレアアース、石油、LNGおよび関連する石油製品が大きく不足する事態が続きます。国民がいつまで負担に耐えれるのか。

3月19日に国会議事堂前では1万人を超える戦争反対のデモが行われました。今後、この動きは大きくなっていくと思われます。

日本の厳しい状況を考えれば高市首相は訪米するのではなく、中国、イランへと飛びレアアース、石油関連の物資が日本に届くようすべきだったのではないでしょうか。(中国にはまずは発言の撤回が不可欠となりますが)。

日本人の一人一人がこの最大限の窮地を認識し、自らを守る為の行動を取って欲しいと思います。日本に明るい未来が訪れる事を切に願っています。

【筆者紹介】

pastedGraphic_8.png

清水 泰雅(しみず やすまさ)

STECO GLOBAL LIMITED (香港)CEO、上海清環環保科技有限公司(STECO)董事長、安立飛商務信息諮詢(上海)有限公司 董事長

1961年愛知県名古屋市生まれ。90年より愛知県で空調ダクト洗浄の専業サービス業を創業。2005年、中国上海市に独資にて法人を設立後、今日まで中国ビジネスに携わっている。JETRO、自治体、証券会社などをはじめ彼らが主催する中国関連セミナーでの講演多数。2015年以降は、大手コンサルティング企業とも連携し、数多くの中国ビジネス案件に注力している。

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