特区政府香港投資推進局(インベスト香港)は駐東京香港経済貿易代表部と合同で、5月25-28日に日本企業を招いて香港視察ミッションを実施した。製薬、医療・健康機器、バイオテクノロジー、ヘルスケア、生命健康科学(Life & Health Sciences)分野の日本企業を対象に香港の最新のビジネス環境を視察したもので2回目の開催となる。日本から13社参加した。インタビュー第1弾は、北里大学の研究成果を活用し在宅血液透析装置を開発、慢性腎不全患者の生活の質の向上を目指す、フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社代表取締役 宮脇一嘉さんに話を伺った。
(聞き手 編集部 楢橋里彩)
フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役
宮脇 一嘉さん
【プロフィール】大阪大学大学院理学研究科修了後、化学メーカーに入社し、フランスにて5年勤務。帰国後は再生エネルギー事業の事業責任者。その後、日系製造業にて、新製品開発と新規事業開発の責任者。2020 年に当社を設立し、現職。
――御社の事業の取り組みについて教えてください。
当社は、血液透析装置の開発を行っており、特に在宅での血液透析を可能にする装置を目指しています。現在、世界中で約500万人が透析治療を受けており、日本では約34万人が血液透析を行っています。
血液透析治療は通常、施設やクリニックで行われ、1回につき4時間、週に3回の治療が必要です。このため、患者やその家族にとって生活の質(QOL)に大きな影響を与えています。在宅血液透析は、患者が自宅で治療を受けられるため、QOLの向上が期待されます。しかし、日本では専用の装置がなく、現在在宅で行っている患者は800人程度にとどまっています。私たちは、この在宅血液透析を普及させるために、家庭での治療に適した装置を開発しています。
――在宅血液透析の重要性についてお聞かせください。
在宅血液透析は、患者にとって非常に大きなメリットがあります。血液透析は医療行為であり、国からの許可が必要です。日本やアメリカではその許可が得られていますが、中国ではまだ認められていません。しかし、香港では在宅血液透析が認められていると聞き、今回、香港視察ミッションに参加しました。
世界では施設での血液透析が主流ですが、香港では腹膜透析が主流の珍しい地域です。香港では、透析を受けている患者が約4500人おり、そのうち3000人が腹膜透析を行っており、また、腎移植が非常に多い地域です。しかしながら、血液透析患者もそれなりにおりますので、私たちの装置が導入されれば、患者にとっての負担が軽減され、生活の質が向上することが期待されます。
――香港市場について、どのような展望を持っていますか。
香港市場については、医療機器に関して政府の承認は不要ですが、特殊な承認が必要であることから一定のリスクが伴いますが、非常に重要な市場と位置づけています。私たちは、香港での成功を足がかりに、中国本土市場への進出も将来的に検討しています。地理的な近さもあり、ビジネスの拡大が期待できるため、香港市場を通じて新たなビジネスチャンスを追求していきたいと考えています。
一方で、医療機器市場は常にリスクを伴うため、地政学的リスクも考慮しながら、信頼できるディストリビューターを見つけることが重要です。香港市場での成功が、今後の成長に繋がると信じています。
――中長期的な展望や事業戦略について教えてください。
中長期的には、台湾や韓国をはじめとするアジア市場への注力を強化していきたいと考えています。これらの地域では、在宅血液透析の需要が着実に高まっており、特に高齢化社会が進む中で、患者数の増加が予測されます。人口も多く、ビジネスチャンスが広がっているため、これらの市場においてはさらなる成長が期待できます。
また、東南アジアやインド市場にも積極的に進出していきます。これらの地域は急速に経済成長を遂げており、医療インフラの整備が進んでいることから、私たちの製品に対するニーズも高まると見込んでいます。
私たちの大きな目標は、在宅血液透析の普及を通じて、患者の生活の質を向上させること。在宅での治療が可能になることで、患者はより自由な生活を送ることができ、精神的な負担も軽減されます。そのため、今後も技術革新を追求し、新しい治療法や機器の開発に取り組むことで、より多くの患者に貢献できるよう努めていきます。
さらに、地域ごとのニーズをしっかりと把握し、現地の医療機関やパートナーとの連携を強化し、効果的なマーケティング戦略を展開していきたいと考えています。
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