ソーシャス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:尹世羅)は、2026年4月26日(日)、東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井カンファレンスにて開催した招待制エグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」(以下、T4IS2026)のクロージング基調講演として、英利アルフィヤ(えり・あるふぃや)外務大臣政務官・衆議院議員(千葉5区選出、自由民主党)にご登壇いただきました。
過去のサミットには、オードリー・タン氏(元台湾デジタル担当大臣)、平井初代デジタル大臣、チャールズ・ホスキンソン氏(Cardano創設者)、キャシー松井氏(MPower Partners 共同創業者・元ゴールドマン・サックス副会長)らが登壇しています。
セッションのテーマは「Democracy and Diversity(民主主義と多様性)」。1日を通じてテクノロジー、資本、社会的インパクトの交差を議論してきたサミット参加者に対し、英利氏は、ご自身の選挙経験を通じた日本の民主主義の現在地、AI・テクノロジー時代の外交、そしてダイバーシティが日本に持つ意味を、対話的に語りかけました。
▼ 英利氏 クロージング基調の核心メッセージ
▶ 1. 会場への問い——「自国の政治家が自分を代弁していると感じる方は?」
クロージング基調の冒頭、英利氏はサミット会場の世界各国から集まったエグゼクティブに対し、ひとつの問いを投げかけました。
「皆さんいろいろな国からいらしていると思いますが、ご自身の国の政治家が自分を代弁してくれていると感じる方、どのくらいいらっしゃいますか? 自分と似ている、と感じる方は?」(英利氏、要旨)
会場で挙がった手は、ほぼゼロでした。日本人、欧米のビジネスリーダー、アジア各国の起業家・投資家を含む参加者の誰一人として、自国の政治家に「代弁されている」「自分と似ている」と感じていない——この事実そのものが、英利氏のクロージング基調全体を貫く出発点となりました。

▶ 2. 立候補のきっかけ——「気持ち悪いほどの均質性」
英利氏は続けて、自身が立候補を決めた最初のきっかけが、ニューヨークの国連事務局本部から日本の政治を見ていて感じた違和感だった、と語りました。
「気持ち悪いほどの均質性──特定の年齢層、特定の家系、特定の経済的背景の男性ばかりが立候補し、当選し続けていて、女性も少なく、私のような人間も、私が代弁されていると感じられる人も、私の友人たちが代弁されていると感じられる人も、立候補者の中にほとんどいなかったんです」(英利氏、要旨)
「国政、地方、知事、市長、どのレベルでも候補者はほぼ全員、男性で、男性でなければ世襲議員でした。あまりにも時代遅れに見えました。日本のこの民主主義の枠組みの中で、私たち自身がアジアの民主主義のリーダーだと自負しているのに、です」(英利氏、要旨)
▶ 3. 立候補へ——河野太郎氏への一本の電話から
転機は、本日のサミットでも登壇した河野太郎衆議院議員への一本の電話でした。
「ジョージタウン大学の同窓ネットワークでお名前を存じ上げていて、私が知っている唯一の政治家でした。だからお電話したんです」(英利氏、要旨)
英利氏が「この状況に納得がいかない」と伝えたところ、河野氏は次回帰国時に自民党を訪ねるよう勧めました。1年後に来日したところ、48時間で党内の複数の会合が組まれ、2か月以内に立候補することが決まったといいます。
▶ 4. 6週間で5万4,000票——「名前を書く」民主主義のなかで
英利氏は国連の仕事を辞めて帰国。最初の国政選挙は、全国比例代表として、わずか6週間の準備期間で挑むことになりました。
事前には「3,000〜4,000票取れれば上等」と言われていたなか、英利氏が得た票は5万4,000票。日本では候補者名を有権者が自筆する必要がある——伝統的な日本の名前を持たない候補者にとっては構造的な不利の中で、達成された数字でした。
「日本では、投票するときに候補者の名前を自分で書かなければなりません。ですから、5万人もの方々が6週間で私の名前を覚え、投票所に足を運び、全国でその名前を実際に書いて、より多様な代表が必要だ、と意思表示してくださったということなんです」(英利氏、要旨)

▶ 5. 千葉5区——9週間で僅差勝利、3度目で8万票超の圧勝
党内に大きなインパクトを与えた英利氏は、半年後、千葉5区(市川市・浦安市)の補欠選挙に擁立されます。前任者が政治とカネの問題で議席を失った後、住んだことのない選挙区で、9週間で信頼を回復しなければなりませんでした。
「市川市と、東京ディズニーランドのある浦安市から成っていて、日本でも有数の多様性のある地域のひとつです。およそ100カ国の出身者がお住まいで、ミックスルーツの方も多く、東京に通勤されている30代から40代の日本の方も大勢いらっしゃいます」(英利氏、要旨)
英利氏はこの選挙を僅差で制し、衆議院議員に初当選。翌年の総選挙では政治とカネの問題が全国的争点となるなか、選挙区では敗れるも、全国比例で復活当選。そして直近の選挙では、圧勝で議席を確保しました。
「夜8時、投票締め切りの瞬間に当確が出ました。開票が始まった時点で8万票以上が、私の名前で投じられていたんです」(英利氏、要旨)
「私たちの民主主義はもっと良くなれる、私たちの世界はもっと良くなれる、30代でやってきたばかりの女性に代表されてもいい、と本気で信じてくださったということです」(英利氏、要旨)
▶ 6. 数字の構造——10%→14.6%、参議院30%、女性総理誕生
英利氏は、ご自身の選挙経験を、より大きな構造変化のなかに位置づけました。
・2023年 英利氏初当選時の衆議院女性比率:10%
・英利氏と同期の自民党初当選議員:40人
・そのうち、選挙区から当選した女性:1人(=英利氏)
・翌年の総選挙後の衆議院女性比率:15%超
・直近の衆議院女性比率:14.6%
・英利氏が初めて立候補した頃の参議院女性比率:約25%
・直近の参議院女性比率:約30%
「これらの数字は、日本において代表性への関心が高まっていることを示していると思います。それは私のような選挙、そして同じ志を持った候補者たちの選挙から始まりました。そして私の選挙区のような、いくつかの地域から始まったんです。それが今、広がってきています。皆さんご存知のとおり、いまや女性の総理大臣も誕生しました」(英利氏、要旨)

▶ 7. 対照的なトレンド——国内で前進、世界で後退
英利氏は、外務大臣政務官の立場から、国内の前進と、世界全体での後退が、同時並行で進む「対照的なトレンド」を指摘しました。
「現在外務大臣政務官を務める立場として、世界では民主主義、人権、市民権、そして法の支配のための空間が、世界全体で次第に狭まっているのも感じています」(英利氏、要旨)
「国内ではダイバーシティと代表性への関心が高まり、より多様な声が国内で増えていく一方で、世界に出ていって、ようやくそれを大切にする日本を代表できる立場になっても、向き合う世界の方は、より包摂的で、より公正で、より平等な世界をつくることへの関心を、ますます失いつつあります」(英利氏、要旨)
そのうえで、日本がこの状況下で果たすべき役割について、こう続けました。
「そうした中で、日本は引き続き民主主義とダイバーシティの理念を、『自由で開かれたインド太平洋』というビジョンを通じて掲げ続けています」(英利氏、要旨)
▶ 8. クロージング・テーゼ——AIガバナンスは「代表性」の問題である
T4IS2026 のクロージング基調として、英利氏はサミット全体を通底するテーマ——テクノロジー、資本、社会的インパクトの交差——を、代表性とダイバーシティの視点から束ねました。
「AIガバナンスやテクノロジーについて考えるとき、ぜひ、代表性とダイバーシティの大切さ、より良いガバナンスの必要性、そして人権の視点をそこに組み込んでいくことの重要性も、考えてみていただきたいんです」(英利氏、要旨)
「自分のしていることは、本来この議論に加わるべき人たちを、ちゃんと包摂できているか? 今この議論の中で、本来取り上げられるべき声がすべて取り上げられているか? その声はちゃんと代弁されているか? AIやテクノロジーを語る上で、これはますます重要になっていくと思います」(英利氏、要旨)

▼ Q&A——なぜ日本の女性政治家は少ないのか:3つの構造的障壁
クロージング基調の質疑応答では、若い参加者から「『そもそも政治家になりたいと思っている日本人女性自体が、そんなに多くない』という議論も耳にする。根本的な問題は何か」という質問が出ました。英利氏は、この問いを正面から受け止め、3つの構造的障壁を順に提示しました。
▶ 障壁①:朝6時〜夜12時の働き方
「自民党に所属していれば、毎朝、選挙区の駅前に立つことが推奨されます。それが朝6時から始まります。それから電車に乗って東京に出てきて、朝8時から自民党の会合があります。そこから9時には委員会の会議が始まります。もし大臣、あるいは私のような大臣政務官の立場であれば、9時から所管の省庁に入ります。国会では一日中、答弁にあたります。同時に外交の仕事もこなして、世界中から来られる方々とお会いします。そして午後には、国会の本会議があります。夕方になると、2、3時間ほど選挙区の方々とお話ししたり、地元の活動をしたりする時間があります。夜には、ワーキングディナーがあったり、外交の仕事があれば、レセプションが入ります。つまり、想定される一日は朝6時から、夜中の12時までなんです」(英利氏、要旨)
「女性ではなかったとしても、20代、30代、40代の男性で、子育てに参加していたり、ご両親や家族の介護をしていたり、家のことを担っていたりすれば、こんなスケジュールはとてもこなせません」(英利氏、要旨)
英利氏は、この仕事は「家事をしなくていい、子育てもしない、仕事以外に責任を負わない男性政治家を前提に設計されている」と整理しました。
▶ 障壁②:ロールモデルの不在——「見えなければ、なれない」
2つ目の障壁として、英利氏はロールモデルの欠如を挙げ、本日のメインステージに登壇したキャシー松井氏(MPower Partners ジェネラルパートナー)の言葉を引用しました。
「先ほどご登壇されたキャシー松井さんも、いつもおっしゃっています──『見えなければ、なれない』と。日本の政治の世界にも、まさにそれが当てはまると思います」(英利氏、要旨)
英利氏は、参加者に対して、「皆さんが私を見て、そう感じてくださっていたら嬉しい」「ある意味で、エビデンスになる」「自分たちのような人間にもこれは可能なんだ、実際にやった人がいる、できるんだ、自分たちのような人にも票は入るんだ」と述べました。
▶ 障壁③:資金——「資金提供者やスポンサーは、いまだに男性に資金を出す傾向がある」
3つ目の障壁として、英利氏は選挙資金における構造的な格差を指摘しました。
「選挙にはとてもお金がかかります。多額の資金が必要です。それなのに、資金提供者やスポンサーは、いまだに男性に資金を出す傾向があります。起業家でも同じですが、女性にとっては、立候補に必要な額を集めるのは、はるかに難しいんです」(英利氏、要旨)
英利氏は、ご自身については党の支援を受けられた稀なケースだとしつつ、「こうしたあらゆる要因が、女性だけでなく、若者や、政治家家系出身ではない方々にとっても、立候補のハードルになっている」と総括しました。
そして、最後に若い参加者に向けてこう語りかけました。
「ぜひ立候補を真剣に考えてみてほしいんです。確かにハードルはありますが、一人ひとりが挑戦することで、その壁を崩していけると思います」(英利氏、要旨)

▼ 英利アルフィヤ氏 プロフィール
英利アルフィヤ(Arfiya Eri)氏——外務大臣政務官、衆議院議員(千葉5区選出、自由民主党)。1988年福岡県北九州市生まれ。ウイグルとウズベクのルーツを持つ。
2010年ジョージタウン大学外交政策学部国際政治学科卒業、2012年同大学外交政策大学院ロシア・東欧・中央アジア研究科修了。2012〜2016年 日本銀行勤務を経て、2016〜2022年 国連事務局本部(ニューヨーク)にて、国連事務次長補のスペシャル・アシスタント等の要職を歴任。
2022年に政界入り。2023年 衆議院補欠選挙(千葉県第5区)にて初当選。同年、米TIME誌「TIME 100 NEXT」(次世代の世界的リーダー100人)に選出。2024年 第2次石破内閣にて外務大臣政務官に就任、2025年・2026年 高市内閣にて再任。外務省において、欧州、中央ユーラシア、中南米・カリブ、国際協力(ODAを含む)、グローバル課題を担当。
日本語、英語、ウイグル語、ウズベク語、中国語、トルコ語、アラビア語(初級)の7言語を操る。
▼ 関連リンク
・Tech for Impact Summit 公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja
・ソーシャス株式会社 コーポレートサイト:https://socious.io/ja
▼ ハイライト映像
英利アルフィヤ氏 クロージング基調『Democracy and Diversity』(YouTube):
https://www.youtube.com/watch?v=KvykoC5cr6g
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