これまでアメリカ企業は自動車や建設を始め、国内生産コストの上昇によって製造業やサービス業の競争力が失われてきました。米企業は生き残りを掛けて海外に進出していきました。これがアメリカ主導の「グローバリゼーション」と言われる現象です。しかしその為に国内での仕事はなくなり、産業の空洞化が進行しました。アメリカはどういう着地点を見出すのでしょうか? トランプ関税が一つのヒントになるような気がします。(ICGインターナショナル代表・沢井智裕)
1 アメリカ流グローバリゼーション
ここ数カ月、お騒がせとなっている「トランプ関税」はアメリカに輸入される原材料・製品・商品に掛かってくる税金です。つまり最終的にはアメリカ国内の消費者が支払う税金です。トランプ大統領が自国民を苦しめるべく輸入関税を掛ける目的は一体何なのでしょうか? 関税を導入する傍ら、トランプ大統領は「アメリカ国内で製造する外国企業には課税しない。アメリカ企業で海外に進出している企業の国内回帰も歓迎する」という方針を示しています。つまりトランプ大統領は、関税の導入によってアメリカ国内での雇用創出、そして関税で得た資金を新たな国内投資の財源にしたいというビジネスマン的な発想が背景にあるのです。
アメリカはこれまで自由貿易を推進し、多くのグローバル企業を育成してきました。私達は主要先進国の都市部で、マクドナルドやスターバックス、セブンイレブンを見ることが出来ます。これらの企業の現地における安全保障を米軍がサポートしてきました。
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所の公開資料によりますと2024年のアメリカの軍事支出額は9973億ドルでトップです。2位の中国の3137億ドル、3位のロシアの1490億ドルを大きく上回ります。(日本は553億ドル)巨額の軍事費は現地の政治体制の転換やルールの変更といったリスクに対して「武力的な圧力」によって目を光らせる役割を果たしてきました。しかしながら米企業が現地に進出することによって、アメリカ国内では雇用が喪失し、運営ノウハウが失われ、技術も流出してしまいました。現在ではアメリカ企業は造船が出来なくなってしまいました。
2 アメリカの失敗は貧富の格差と移民政策
トランプ政権の再登場は、グローバリゼーションで恩恵を受けることが出来なかった米国民が生んだと言えるでしょう。つまりグローバリゼーションの恩恵を受けることが出来なかった人たちがそれほど多かったということです。彼らはアメリカ国内に安価な製品を輸入してくる企業・業者は、外国籍の企業はもとより(海外生産している)米企業でも容赦
はしないということです。共和党支持者のうちの89%もの人々がトランプ関税の導入に賛成の意思表示をしています。つまり裏を返せばこれまでの米政権が行ってきたグローバリゼーションは、ついに限界に達したのです。
話は少し変わりますが、トランプ大統領はなぜハーバード大学やコロンビア大学といった名門大学の補助金を減額したり、打ち切ろうとしているのでしょうか? 表向きは「ユダヤ人学生に対する嫌がらせへの対策を怠り続けた」とか「キャンパスでの反ユダヤ主義的な嫌がらせや人種差別問題に、大学指導部が十分な対応をしていない」といったイスラエル擁護が理由だったようですが、筆者の友人で米加州に在住している米系華僑は違った意見を述べていました。
3 米大学の優秀な生徒は中華系が占める
この友人は某名門大学大学院(Master Degree)の物理の講師をしています。そのクラスでは40人の生徒が受講しているのですが、この40名の生徒の内訳が、20名は中華圏、10名がインド系、残りは9名がアジア系で、1名のみが白人(アメリカ人)だそうです。今、名門校の大学院クラスのマジョリティが中華圏や他国の留学生が占めているそうです。アメリカでは名門大学の「ウインブルドン現象」が起こっているのです。
友人の講師が初めての授業で、目にした生徒の構成を見て驚いたそうです。まさかアメリカのトップの大学のクラスには土着の白人がほとんどいないとは・・・。
トランプ大統領は、表向き不法移民にターゲットを絞っていますが、実は自国民(白人)の学力の低下を嘆いており、その学力の低下で白人がレベルの高い教育を受ける機会を失い、最高の教育はアジア系の移民や外国人が享受する事に危機感を持っていると、その友人は言うのです。
それは今後のアメリカ社会に影を落とすことになります。優秀なアジア系や外国籍の留学生が、将来は米企業の経営者になったり、幹部の職に就き、アジア系の出身者が大部分を占め、白人は彼らの企業に就職することになるのです。筆者の友人は、「トランプ氏が本当に恐れているのはこれらアメリカの大学や企業における白人の地位低下だというのです。世界最大の株式時価総額を誇る米企業の創業者は台湾系のジェンスン・ファン氏です。同氏のような現象がアメリカでは当たり前になる時代がそこまで来ているとの危機感がアングロサクソン系の人種や古くからの欧州系の白人移民の間に相当な危機感として、定着しつつあるのです。従いまして、トランプ大統領の任期が4年だから、4年後には米政策が変わると見るのは早計なのかもしれません。アメリカ社会が貧富の格差と移民問題を解決できない可能性は限りなく高いと考えます。
中国だけでなく、香港も日本もこのアメリカの状況が恒常的に続く、もしくは長期化すると考えた上でアメリカとの付き合い方を考える方がいいでしょう。
貧富の格差を示すG7諸国のジニ係数は、比較可能な2022年時点でアメリカは0.4とトップです。一般的に0.4のレベルが社会騒乱の起きる警戒ラインとされています。イギリスが0.37で続き、日本が0.34とG7諸国の中では3番目に浮上しています。
中国のジニ係数は2003年に0.4に達して以降、統計の発表を止めてしまいましたので、現時点ではよく分かりません。いずれにしましても4年後もアメリカの状況は変わらないでしょう。今から世界の各国は覚悟して「反・グローバリズム」に備える必要があります。私たちもアメリカの政治動向が無視できなくなりました。
(資料)G7諸国のジニ係数
https://www.globalnote.jp/post-12038.html
ちょっとお笑い、アトム&ジュエリー
アトム: いいとか悪いとか言うつもりはないけど、石破さんは菅さん、鳩山さんと
いった歴代の首相と肩を並べてしまったなあ。
ジュエリー:ここまできたら、何とか首相に居座って「自民党を解体」して欲しいよね?
アトム :昔、「自民党をぶっ壊す」って言うといて、自分だけ辞めてしまった首相も
おったなあ。
ジュエリー:まあ自民党も1955年の結党以来の党是が「憲法改正」で、70年経過した今も
実現できない訳だから、今後70年経っても何も出来ないでしょうね。
アトム: アホやなあ。今、党内で議題にも上がってないやん。ムリに決まってるやん。
ジュエリー:だいたい自民党って、右派から左派まで幅が広過ぎて何も決められないの
よね。まあ選挙互助政党ですからね。当選するのが目的ですからね。
アトム: それが困るねん。でも今回の参院選は若い有権者が結構、投票してくれた
らしいから投票率が上がったやん。しかも結果も変わったしな。
ジュエリー:特に40代以下の有権者には投票して欲しいよね。若い人達は情報リテラシー
が抜群。70代以上の有権者は、ネットに触れる機会が少ないので、オールド
メディアの偏った情報に頼りがち。バランスが取れなくなってしまうよね。
アトム: もうジャニーズ事務所に始まって、フジテレビのスキャンダルとか、
オールドメディアの印象操作に若い人達は騙されへんからね。
彼らの情報リテラシーの高さは凄いよ。
ジュエリー:昔、「若い人達は選挙に行かずに家で寝てくれていたらいい」と発言してた
首相がいたなんて懐かしいね。
アトム: そんなおっちゃん、確かにおったなあ。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
香港在住。
1995年にイスラエル人パートナーと共同経営でICGグループを設立。プライベートバンキングとファンドマネジメントを中心とした金融事業に精通。
ヘッジファンドやエクイティファンドを運用し、経験値と実績を積み重ねる。2022年には金融事業の一部を香港の上場企業に売却。
香港では米系華僑のアトラス・キャピタル社のレスポンシブル・オフィサーに就任し、華僑系の資産運用も一任されている。
香港から見た国際経済・国際金融についてユダヤ・華僑富裕層から得た情報を元に、日本国内では独自の切り口で上場企業や各団体の依頼で講演活動を行う。
著書多数。
https://www.icg-overseas.com/blog
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