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華南―経済

広州ものづくり

アパレル量産の品質は、実はサンプル確認の段階でほぼ決まります。広州の縫製工場で実際に行っているチェックの流れと判断のポイントを、在中17年の視点から、現場の写真と動画とともに具体的にお伝えします。(文・写真 平 賢介)

(1)量産の品質は、サンプル確認で決まる

アパレルのものづくりと聞くと、デザインや素材選びが注目されがちですが、現場に17年いて感じるのは、量産の仕上がりを左右するのは「サンプル確認」の段階だということです。ここでの判断が甘いと、数百枚、数千枚を縫い上げたあとに問題が見つかり、修正のしようがなくなります。逆にここで丁寧に詰めておけば、量産は驚くほど安定します。

サンプル確認は一度では終わりません。ファーストサンプルで方向性を固め、修正を反映した量産前サンプルでもう一度詰める。この往復を面倒がらずにやれるかどうかで、納期もコストも大きく変わってきます。仮に量産後に不具合が見つかれば、直しにかかる時間と費用はサンプル段階の比ではありません。

今回は、新作アイテムのサンプル確認のために、広州近郊の縫製工場を訪ねた時の様子をご紹介します。記事中の写真は、実際にその日の打ち合わせと検品の現場を撮影したものです。机の上にサンプルと仕様書を広げ、工場の担当者と一緒に一枚ずつ確認していくところから始まります。

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(2)最初に見るのは「そもそも実現できるか」

サンプル確認というと縫い目のチェックを想像されるかもしれませんが、最初に確認するのはもっと手前の話です。作りたい商品が本当にこの仕様で実現可能かどうか。難しい場合は「どの部分が、なぜ難しいのか」を、工場側が持っている見本サンプルを実際に手に取りながら一つずつ確認いきます。工場には過去に手がけた商品の見本が数多く残っており、「この縫い方なら近い表現ができる」「この仕様なら設備的に対応できる」といった代替案が、その場でいくつも出てきます。机上のやり取りだけでは決して出てこない選択肢です。

その上で、サイズ感、生地の落ち方、着たときのシルエットが、企画段階のイメージとズレがないかを見ます。写真の一枚は、実際に人が着用してシルエットを横から確認しているところです。平置きでは分からない生地の流れや張りは、立体にして初めて見えてきます。数ミリの違和感をここで言葉にして共有できるかどうかが、後の仕上がりを分けます。

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(3)縫い目、糸処理、そして「量産でブレないか」

シルエットの次は、縫製の細部です。縫い目がまっすぐきれいに通っているか、ステッチの幅は仕様書どおりか、糸の処理に甘さはないか、縫い縮みによる生地の波打ちが出ていないか、力のかかる箇所の補強は十分か。ニットであれば縫い目の伸びも確認します。着脱で縫い目が突っ張るようでは、商品として成立しません。そしてもう一つ大事なのが、「量産したときにブレが出そうな箇所はないか」という視点です。サンプルは工場の熟練者が一枚だけ丁寧に縫います。しかし量産では複数の職人が分業で縫うため、難しい仕様はそのまま品質のバラつきになって返ってきます。

正直、かなり地味な作業です。縫い代をめくり、裏返し、引っ張って、光に透かす。それでも、ここでの見落としが後で大きな修正につながることを何度も経験してきました。写真にある裏返したサンプルの細部こそ、私たちが一番時間をかけて見ている部分です。

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(4)「完璧」を求めすぎない。量産で再現できる形へ

意外に思われるかもしれませんが、サンプル段階では「完璧」を求めすぎないことも大切です。基準はあくまで、量産を前提にしたときに工場側で安定して再現できる仕様かどうか。時間とコストをかけすぎず、安定して作れる形に落とし込めるかを、工場と一緒に探っていきます。

サイズ修正や仕様変更が必要なら、その場で相談します。「ここを少しだけ変えたい」「この仕様だと量産では難しい」。そうした会話・サンプルを挟んで直接やり取りできるのが、現地に拠点を持つ強みだと感じています。メールや写真の往復では一週間かかる調整が、現場ではものの十分で決まることも珍しくありません。

派手さのない工程ですが、17年この仕事を続けてきて、結局ここが一番ものづくりの面白さが詰まっている時間だと感じています。今回の確認の様子は動画でもそのまま撮影していますので、現場の空気感も含めてご覧いただけたら嬉しいです。

動画: https://youtu.be/A1kahhD_wBw

【筆者紹介】

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広州吉之軒科技有限公司総経理。16歳のときに「服づくりでご飯を食べる」と決め、行動を続ける中で2009年に中国・広州へ渡る。現在、在住17年目。日本向けアパレルOEM生産を中心に、生産企画・デザイン、自社マタニティブランド「MUNNY(ムニー)」の運営を行う。企画から生産、販売までを一貫して手がけ、中国アパレル縫製工場の現場から、ものづくりの実態を発信している。

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